Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―




本城さんだ!


叩かれたノックの音は、優しかった。



「「はい」」


……俺は行動に移すのが鈍いのかもしれない。


どうぞ、と言おうとすれば、レイコさんと兄貴、二人に先に返事をされた。



その声を聞いて開くドア。


ドアの方に視線をやり、訪問者を確かめようとする二人。


俺としては、もう少し後に来てくれれば…と思った。




本城さんが約束通り朝から来てくれたことは嬉しい。



だけど、俺だけしか部屋にいない時に来て欲しかった。





……本城さんも、ここまで俺が一人だと思って来ていたらしい。


部屋にいる俺達を視界に入れた瞬間、少し驚いたように目が開いた。



「いらっしゃい、波音ちゃん」


また、俺より先に……




変な所でイラつく俺。


頭を下げて、戸惑いがちに歩いてくる本城さん。



「あ……コレ、蜜柑です」


本城さんの手に持たれた、スーパーのビニール袋。



兄貴へと渡そうとしていたその袋を、“蜜柑”と聞いた瞬間、ひったくった。






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