Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―




「蜜柑!?本城さんありがとー」


袋の持ち手部分を左右に開けば、中には赤のネットでまとめられた蜜柑が二つ。


結構な量を買ってきてくれてる。


手を入れてネットを開き、適当に一つ、蜜柑を取り出した。



「昨日兄貴が持ってきてくれた分、食べたんだよなー」


丁度良いタイミングだった。



食べよ。



「……波音ちゃんは、もう聞いたんだ?記憶の事」


兄貴が、本城さんに話し掛ける。


俺からは兄貴に蜜柑で少し思い出せたこと、言ってないけれどきっとレイコさんから聞いたんだろう。



「はい、昨日……。
涙の事だから、もう全部食べ終わってるだろうなーと思いまして」


クスッと笑いながら小さく言った本城さんに、何故だか嬉しくなった。



……すげぇ。


良く、俺のことが分かってる。



「さすが」


兄貴も感心してるし。



……もしかすると、昔の俺と同じことやってんのかも。


昔の俺も、蜜柑が好きだったって言ってたし、もしかするとこんな感じでペロッと食ってたのかも。


やっぱり、体が覚えてんのかな。




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