Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―





「……スーツ?」



中は透明な袋に包まれたスーツ一式だった。


これが、俺の?



デザインも見覚えが無い……忘れてるだけ、か。




「それ、お前が事故った時に着てた服。雨降ってたし落ちて汚れてたからクリーニングに出してたやつ」


「そっか」



ありがと。



ぽつり、スーツを見ながら呟くと、兄貴は「早く閉まって来い」とだけ笑って言った。



頷いて寝室にあるクローゼットへと向かう。




あ。


クリーニング代、兄貴に返さなきゃな。




汚れていたとは思えない綺麗なスーツ。



ハンガー付きになっているし、そのまま掛ける。




そして紙袋を畳もうと折り始めた――――時。






袋の外側から触れた手のひらに、変な感覚を感じて、手を止める。




まだ、中に何かあったっけな。



そんな事を思いながら、紙袋の中に手を突っ込むと、触れたそれ。





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