MEMORIAL ADRESS
だけど、今そんな気持ちは全くない。

手紙に魔法でもかけたのかと思う程、日向子の言葉は胸に染みていて響いて…

部屋の隣にあるキッチンから、母親が夕飯を作っている音が聞こえる。



「仕事…今日早く終わったんかな…」



気付かれないように部屋のドアをあけて、キッチンの様子を見ると母親は忙しく夕飯の用意をしている。

ドアをまた閉めようとした時、日向子の一言が頭の中を通り抜けていった。



『やり直せるよ』



やり直せるなら、やり直したい。

破天荒な事ばかりして、体に消えない絵を刻み込んだ自分を変えたい。

体の絵が消えないなら、中身だけでもいい。

やり直せるなら、変われるなら…

学校からじゃない。

友達じゃない。

はたまた男でもない。

完璧に自分自身の手で壊してしまった母親との関係を築き直す事が、その一歩だと瞬時に気付いた。

歩み寄らなかったのは自分。

父親と母親が離婚したのをキッカケに荒れだして、何もかもなし崩しにしたのは…自分自身。

今日、日向子や上総たちに出会ったのには理由があったのだろう。

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