至近距離恋愛 -Hero-
「杏里♪こっち、こっち!」


待ち合わせ場所の駅前に着くと、先に来ていた稔が車から顔を覗かせた。


「あっ、ごめん……。待った?」


いつもの彼なら、既に不機嫌になっているハズ。


だけど今日は機嫌がいいのか、稔はニッコリと笑って首を横に振った。


そんな彼の態度を、すごく不思議に思った。


いつものあたしなら、きっと稔の機嫌がいい事を喜んでいる。


それなのに…


今日は喜ぶどころか、稔に笑顔を向ける事すら出来なかった。


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