至近距離恋愛 -Hero-
「ごめん……」


もう一度謝って、稔の向かい側に座った。


その瞬間、彼は無言で立ち上がった。


「どこ行くん……?」


不思議に思って訊くと、稔はため息をついた。


「こんなとこにおっても時間の無駄や。行くぞ!」


「え?もうちょっとゆっくり……」


言い掛けたあたしの言葉も聞かずに、稔が足早に歩き出す。


「稔っ……!」


あたしはテーブルに置いてあった伝票を手に持って、慌てて彼の後を追った。


< 38 / 130 >

この作品をシェア

pagetop