至近距離恋愛 -Hero-
「なぁ、杏里」


「何?」


不意にあたしを呼んだ稔に小首を傾げると、立ち止まった彼が少し先に目を遣った。


あたしも、自然とその視線を追う。


「入ろうや」


稔は数メートル程先にあるホテルに視線を送ったまま、端的に言った。


久しぶりのデート。


しかも、会ったばかり。


それなのにいきなりホテルに入るなんて、どうしても気が乗らなかった。


そんな気持ちを抱えて黙っていると、稔が口を開いた。


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