至近距離恋愛 -Hero-
「嫌やったら、別にイイわ……」


そう言った稔の表情は、不機嫌なのが明確だった。


「ううん、そんなんちゃうよ!行こ!」


稔に嫌われたくない一心で、すかさず笑顔を見せた。


「ん、行くで」


稔は少しだけ表情を和らげると、あたしの手を引いて足早に歩き出した。


本当は、ホテルなんて行きたくない。


憂鬱な気持ちのあたしは、何だか足が重く感じてしまって…


稔と手を繋いだまま、無言で彼の後ろを歩いていた。


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