至近距離恋愛 -Hero-
稔の押しに負けてしまったあたしは、財布から五千円札を取り出して彼に渡した。


「サンキュ♪すぐ返すから!」


「うん……」


あたしが小さく頷くと、稔はニッコリと笑った。


「杏里は、最高の彼女やな♪」


ただ、調子良く言っているだけ。


お金を貸したから、機嫌が直っただけ。


それをわかっていても、稔の言葉がすごく嬉しかった。


あたしは上機嫌の彼に笑顔を向け、バスローブを羽織ってからバスルームに向かった。


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