至近距離恋愛 -Hero-
「……今、いくらある?」


「えっ?」


「今、財布にいくら入ってる?」


再度訊かれたあたしは、戸惑いながらも口を開いた。


「一万……」


「何や、あるやんか。それ貸してや」


渋々答えたあたしに、稔はすかさず笑みを浮かべた。


「でも……」


「何?」


「あたしも金欠やし……」


「じゃあ、半分貸してや。それやったらイイやろ?」


あたしの言葉を遮った稔は、いつもよりも低い声で言った。


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