至近距離恋愛 -Hero-
「うん……。せやな……」


雷は弱々しく言ってからゆっくりと立ち上がり、悲しそうな表情のままあたしを見つめた。


「ごめんな……」


小さく笑った彼が、今までに見た事が無いくらい傷付いた表情をしていて…


あたしの胸の奥が、ズキズキと痛んだ。


「戸締まり、ちゃんとせなアカンぞ」


雷は無理矢理作った笑顔とその言葉を残し、リビングを後にした。


程なくして玄関のドアが開いたかと思うと、静かに閉まる音がした。


その途端、あたしはしゃくり上げて泣き出した。


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