Virgin Snow
「知ってる?」


あたしの前に座っている高志君が、また話し掛けて来た。


「何が……?」


彼の質問の意味がわからなくて、小首を傾げながら訊き返した。


「ため息ついたら幸せが逃げる、ってやつ!」


有名な話じゃん……


「知ってるよ……」


そう答えた後、再び携帯に視線を落とした。


やっぱり、嵐からの着信は無い。


「樹里ちゃん、今ため息したじゃん?イヴなのに、テンション低くね?」


「そうかもね……」


だって……


嵐に振られるかもしれないって時に、楽しく過ごせる訳ないじゃない……


素っ気無い返事をしたあたしは、心の中で悪態をついた。


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