紫陽花なアイツ
玄関のドアを開けた。
鍵を閉めていると、隣からドアが開く音がした。
反射的にそっちを向くと、葉介がいた。
葉介はチラッとこっちを向くと、興味なさそうに欠伸をしてすぐに背を向けて行ってしまった。
…挨拶くらいしろよ、バカ。
心の中で毒付いてみた。
螺旋階段を下りる。
アパートの隣に住んでいるのは、藤崎一家だ。
幼いころは、あの大きな背中に隠れてた。
人見知りが激しかったあたしは、葉介にくっついていた。
葉介は別についてくるななんて言わなかったし、背中に隠れたら黙っていてくれた。
…もうそんなこと
なくなったけど。