レンズ越しの君へ
何とか廉に追い付いて、車に乗り込んだけど…


どんなに謝っても、彼は沈黙を貫き通した。


家に帰るとすぐに、廉がソファーに寝転んだ。


「廉、あのっ……!」


「今から仕事だろ?さっさと行けっ!!」


恐る恐る話し掛けると、廉は低い声で冷たく言い放った。


あたしが悪いんだから、彼が怒るのも当たり前…。


だけど、勝手に傷付いたあたしの瞳に涙が溢れ出した。


「ごめんね……」


一言だけの謝罪を残し、そのまま家を出て店に向かった。


あたしと廉の間に入ってしまった、悲しい亀裂…。


その原因になっている場所に向かっている自分が情けなくて、涙が止まらない。


やっぱり無理なのかな……


あたしと廉は、何もかも違い過ぎるのかもしれない……


色んな事を考えながら、涙を拭う事もせずに足早に歩いた。


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