レンズ越しの君へ
店に着いても、どうしても仕事をする気にはなれなかった。


気分が乗らない。


今日は笑えない。


今すぐ帰りたい。


廉との事が仕事に影響するのなら、あたしはプロ失格。


だけど…


それは、あたしがそれだけ彼を好きだと言う事。


それをわかっていても仕事を続けようとするなんて、きっと最低だ。


好きな人の為なのに、どうして仕事を辞められないの……?


鏡に映るあたしは、綺麗に着飾って可愛くメイクをしている。


それなのに、ちっとも嬉しくない。


例え、どんなにたくさんの人から『可愛い』って言って貰えたとしても、廉の『可愛い』の言葉が一番嬉しい。


彼の気持ちがあたしに向いていないのなら、意味が無い。


だって…


あたしは廉に愛されているからこそ、自分(アタシ)でいられるのだから…。


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