レンズ越しの君へ
あたしは、いつも以上に必死に仕事を熟した。


だけど…


“必死”と言うよりは、“がむしゃら”と言う表現の方が合っているのかもしれない。


引き攣る顔で何とか笑みを繕って、ちっとも楽しくない話に相槌を打つ。


つまらない事でも大袈裟に喜んで、ひたすら飲んでいた。


「今日のユイは、テンション高いなー!」


「だって来てくれて嬉しいし、すっごく楽しいんだもん♪」


「可愛い奴め!よし、ボトル追加するか!」


「わぁ〜、嬉しい〜!」


お客に喜んで貰う為に、心にも無い事を言い続けた。


上辺だけの笑顔…。


心の無い接客…。


最後のお客を送り出した後、色んな事への自己嫌悪で瞳に涙が溢れ出した。


どうしてこんなにも心が痛いのかなんて、誰かに訊かなくてもわかる。


廉、ごめんね……


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