レンズ越しの君へ
「ただいま」


いつもよりも少しだけ早く帰宅した廉が、キッチンに入って来た。


「おかえり、廉♪」


彼に笑顔を向けて、すぐにリビングに夕食を運び始めた。


「……すき焼き?」


「うんっ♪お祝いだよ♪」


弾んだ声で言うと、廉はあたしの瞳を真っ直ぐ見つめた。


「店、辞められるのか?」


「うん!あっ、でも1週間後なんだけど……」


頷いた後で不安混じりに付け足すと、廉が目を見開いた。


そして、彼はポケットからタバコを出して火を点けた。


「お前、一体どんな交渉したんだよ?俺はもっと先になるかと思ってたのに……」


「えっ?」


廉は一瞬だけ微笑み、灰皿にタバコを押し付けた。


あたしは笑顔を見せ、彼にさっきの話を切り出した。


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