レンズ越しの君へ
店でのやり取りを話し終わると、廉が優しく微笑んだ。


「今度、綾ちゃんにもお礼言わないとな」


「うん♪」


笑顔で大きく頷いて、ビールで乾杯をした。


今日の食事とビールは、いつもよりも美味しい。


あたしは、食事中ずっと笑顔を絶やさなかった。


「澪……」


食事を終えてソファーで寛いでいた廉は、テーブルを片付けているあたしを呼んだ。


「なぁに?」


振り返ると、すぐ後ろに彼が立っていた。


「どうしたの?」


不思議に思って小首を傾げながら廉を見つめると、彼はあたしの体をゆっくりと抱き締めた。


「後1週間、後悔しないように頑張れよ……」


「廉……」


あたしは、廉の背中にそっと腕を回した。


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