レンズ越しの君へ
「あのさ……お父さんとお母さんって、どうしてる?」


「……急にどうした?」


あたしの質問に、嵐は不思議そうに訊いた。


嵐が不思議そうにするのも、無理は無い。


あたしが自分から両親の事を口にしたのは、実家を出てから初めての事だったから…。


「うん……。ちょっとね……」


言葉を濁して、嵐からの答えを待つ。


「まぁ……元気にはしてるけど……」


嵐は気まずい雰囲気を感じたのか、控えめに答えた。


「そっか……。じゃあ……」


不意に頭の中に不安が過ぎって、言葉に詰まってしまった。


「澪?」


だけど…


「どうした?」


嵐に促されて意を決したあたしは、深呼吸をしてからゆっくりと口を開いた。


< 266 / 404 >

この作品をシェア

pagetop