レンズ越しの君へ
翌朝、あたしは廉と一緒に家を出た。


「今日のモデルって、どんな人なの?」


そう尋ねると、彼が不機嫌な表情で口を開いた。


「一回しか会った事ないけど、嫌な奴だったよ。強引で、『俺が全て』みたいな感じ。まぁ実力はあるから、周りも認めてるんだろうけどな……」


何気に廉と似てるかも……


そんな事を考えていると、廉が続けて口を開いた。


「……惚れるなよ」


「誰に?」


小首を傾げると、彼はため息混じりにこう付け足した。


「そいつに……」


冗談だったのかもしれないけど、その言葉がすごく嬉しかった。


「惚れないよ♪」


あたしは、運転している廉を見つめながら笑顔で答えた。


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