ひとひらの願い―幕末動乱―
第7章 宵山は静かに
宵山の祇園会所。

祇園祭の宵山で、京の町は賑わっている。
特にここ、祇園は、だから人通りも多い。


「こんな所で人殺しするんですか?」


…なんて、隣に座っている人に小声で言ってみる。

現代で分かりきっていることなのに。


「そうですね……怖いんですか?」

「いえ…怖くなんかないんですけど……」


別に怖くなんかない。
恐れていることも特にない。

―でも。胸騒ぎがするんだ。

ぼーっとしている隣の沖田さんを見ると――――…


「沖田さん、さっきからぼーっとしてません?」

「え、そうですか?」

「熱とかないんですか?」


私がそう言うと、沖田さんは額に手を当てて、しばらくするとはずした。


周りにいる隊士は、皆、何かを待っているようで、静かすぎる。
副長なんかは、腕を組んで険しい顔をしていた。

私がしばらく周りを見渡していると、沖田さんが視界に入った。


「大丈夫ですよ、織さん。心配しないでください」


にこっと笑って、私を見つめる。


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