ゴーストオブアイデンティティー
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時は二時間程遡る。
座敷家跡。
「ハコ」中心部に位置する、八畳間の和室に、二人。
桐と、運命。
「運命、良く聞いて」
桐の声が静寂を破った。物音、呼吸音すら発さずに居る運命といると、独り言のようにも聞こえる。
桐は運命の目を見て、
「運命、貴方は此所を出なきゃ駄目。此所にいちゃ駄目よ」
「何故?」
「上手くは言えないけれど……貴方は此所にいちゃ駄目なの。ううん、貴方だけじゃない。人は、『ハコ』に居ては駄目なのよ」
「…何故?」
じっと見つめ返す運命の目を、逸らさずに。
「あそこには、何も無いから」
運命を、救う。
簡潔、且つ手に余る程に複雑化した目標。
何をもってして「救い」なのか。
「救い」が彼女を幸せにするのか。否か。
果たして桐に「救える」のか。