ゴーストオブアイデンティティー

      **


時は二時間程遡る。

座敷家跡。
「ハコ」中心部に位置する、八畳間の和室に、二人。

桐と、運命。


「運命、良く聞いて」


桐の声が静寂を破った。物音、呼吸音すら発さずに居る運命といると、独り言のようにも聞こえる。

桐は運命の目を見て、

「運命、貴方は此所を出なきゃ駄目。此所にいちゃ駄目よ」


「何故?」


「上手くは言えないけれど……貴方は此所にいちゃ駄目なの。ううん、貴方だけじゃない。人は、『ハコ』に居ては駄目なのよ」


「…何故?」

じっと見つめ返す運命の目を、逸らさずに。


「あそこには、何も無いから」



運命を、救う。

簡潔、且つ手に余る程に複雑化した目標。


何をもってして「救い」なのか。
「救い」が彼女を幸せにするのか。否か。

果たして桐に「救える」のか。


< 111 / 503 >

この作品をシェア

pagetop