狼と赤ずきん。
「う~っわ!
何堅苦しい本読んでるんだよ。
気持ち悪っ。」
近くで声がしたと思って顔を上げてみると
さっきぶつかった男子が
隣の席で私をギロッとにらんでいる。
こいつが荒月。
その目は明らかに私を軽蔑している目で一見
透き通っていて綺麗な目だが
そんな目で冷たくにらまれると
体の震えが止まらなくなる
狼みたいな目であった。
「先生!席移っていい?こいつの隣、嫌だ。」
狼のような目は先生に向けられた。
「ダメだ、指定されている席に座りなさい。」
教卓の後ろに立っている担任の先生が
教卓をグーで叩き怒鳴った。
かすかに、先生の怒鳴り声が震えている事に気づいた。
私も私の中で小刻みに震えているからだ。
荒月という奴は先生から鋭い目を離し
舌打ちをした。
感じ悪い。
先生は一呼吸置いてから教室に明るい声を響かせた。
「これから、一人ずつ自己紹介をしてもらう。
名前を言った後に何か一言と言って座れ。
一番左、廊下側の列から言ってくれ。」
廊下側の一番前の男子が自己紹介を始めた。