幕末Drug。






『…他に、目印になるような特徴は。』



静寂を打ち破ったのは、斉藤さんだった。



『…右手の甲に、昔焚き火をしている時に作った大きな菱形の火傷の跡があると聞いています。』



目に薄っすら涙を浮かべ、斉藤さんの問い掛けに答える藍さん。



『…良しッ!取り敢えずは其の手掛かりを元に京の町を隈なく捜そう。…出来るよな?』


近藤さんが片手で自分の膝を叩き、皆の顔を見渡す。


『…やるしかないでしょう!』


其れに沖田さんが続く。


他のメンバーも反対する事無く、頷いた。



『…山崎。』


土方さんが名前を呼ぶと、音も無く障子が開いた。
山崎さんと土方さんの視線が、一瞬だけぶつかる。


『…承知しました。』


それだけ言うと、土方さんが指示を出す前に山崎さんは去って行った。


『…相変わらず阿吽の呼吸だねェ、土方さんと蒸君。』


沖田さんが感心した様に呟く。


『普段からこき使われているからなぁ…。』


原田さんがそう言うと、冷たい目で土方さんが睨む。


『あ、嘘嘘。冗談です。ハイ。』


肩を竦める原田さんを見て、藍さんが始めて笑顔を見せた。


『皆さん…本当にありがとうございます。』



座った侭、深々と頭を下げる藍さん。



『お礼は、お兄さんが見付かってからでいいよ。』



沖田さんが優しい笑みを浮かべる


…こういう時に見せる沖田さんの笑顔は、本当に優しい。


藍さんが沖田さんを見つめる目が、他の人を見るそれと違うのは…





__きっと、沖田さんに特別な感情を抱いているからだろう。



……女の第六感。



多分、当たってる。





そう思ったら、ほんの少し胸の奥が締め付けられるような気がした。






















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