幕末Drug。





『あー…っと、雛ちゃんに美穂ちゃんだっけ。』


不意に横から声を掛けられ、私達は同時に声のした方へと顔を向けた。


『ひょー…噂通りのべっぴんサンだな。どうも、永倉新八です。あ、あはは…。』


《永倉》と名乗った男は、白い歯を覗かせながら片手で頭を掻いた。
見るからに筋肉のありそうな体付き…そして、活発そうな瞳。


『ちょっ…照れてる場合じゃないっしょ。ホラ、誘わなきゃ!』

永倉さんの斜め後ろに立っていたのは、20歳前後に見える青年だった。
細身の体に大きな瞳が特徴的な、いわゆる女顔の青年。
永倉さんに比べると、背丈もそこまで大きくないように感じられた。

『ああ、そうか…そうだよな。えー…っと、今から道場で稽古するんですが…良かったら観に来ませんか?』

女顔の青年に促され、永倉さんは言葉を選びながらそう告げた。

『稽古、ですか?』

永倉さんの言葉に、雛が反応する。

『そ、そう。剣の稽古。…勿論使うのは真剣じゃなく木刀だけどよ。』

興味津々な様子の雛に見つめられ、息を飲む永倉さん。


『緊張し過ぎて倒れんなよ新八つぁん。…あ、どうも。新撰組八番隊隊長、藤堂平助です。…以後、お見知りおきを。』

永倉さんを肩で押し退け、一歩前へ出て来る藤堂さん。


『あ!ズルイぞ平助!自分だけ格好付けやがって!』

『新八つぁんが格好悪いだけだって。』

『何ィ!?』


睨み合う二人を、私達は只眺める事しか出来なかった。
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