幕末Drug。
『そいつらの言っている事が本当だとしても、俺等の末路なんざァ気にする事ねェ。…歳を喰えば、誰でも老いる。老いて朽ちるのが、自然の摂理って奴だ。…もし、次の戦いで自分が死ぬのが分かったとしても、怯えるだけだぜ?皆、全力で戦えなくなっちまうよ。』




−…確かに、其の通りかもしれない。

原田さんの言葉に、土方さんも頷く。



『…そうだな、運命とやらに翻弄されない為には…知らねェ方が良い事もあるだろ。』



落ち着いた様子の土方さんとは対照的に、近藤さんは大口を開けて笑って見せる。


『それもそうだな!どうせロクな結末じゃねェ事は分かってんだ。…腹を括った馬鹿野郎の集まりが、何処まで此の世の中を変えられるのか…後先考えずに突っ込むのも悪くねェ。』


明るい笑い声が室内に響く。


『…それはそうと。』



近藤さんの笑い声を遮るように、沖田さんが言葉を紡いだ。


『今、まさに君達の世界と俺達の世界が繋がってる訳なんだけど。…少し、案内して貰ってもいいかな?』



私達の背後に広がる光景を眺めながら、沖田さんは薄く笑みを浮かべた。

其の時−−−

『店長ー。お客さん全員帰られたんで、お店閉めちゃいましたよー?』


強盗が入った事にすら気付かずに店の奥で作業を続けていた宮原あおいが顔を出した。


『ああ…悪い。』


『皆も事務所に居たんだ…って、あれ?お客様ですか?』


あおいが不思議そうに隊士達を眺める。


『お客様というか…』


言葉に詰まる店長。


『…ま、一先ず店内に戻ろうか!…案内も含めて、ね。』

雛がフォローを入れると、両手で店内へ追いやるように私の背中を押した。










−…一体、何が起きているんだろう。私は普段と変わらない店内に戻ると、一度だけ事務所の入口と繋がった侭の屯所を振り返った。
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