王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-



ドルメックは部屋の明かりも付けず窓際の椅子に座り、もうすぐ満ちる月の光に照らされていた。


手のひらで弄ぶ、一つの核石…。

この世で最も硬質で、この世で最も美しいと称されるダイヤモンド。


ドルメックの父親である、ダルディアの核石。
国王から渡された15個の仲間の核石の中に入っていたものだ。
母親の核石は含まれていなかった。


(残りの中に入っているのか、それともまだ所在の知れない核石の中か…)


物思いに更けながら、弄んでいた2センチ程の大きさのそれを、目の前に掲げた。
月光を浴び、綺麗なカットの施された宝石が煌めく。

父親の右手のひらにあったそれとは、全くの別物だ。

ドルメックの記憶にある父親の核石は、もう一回りは大きく、形も歪だった。
光を通し反射させるカットなど無く、こんなに煌めきを放つようなものでもない。

原石そのもののような核石だった。


頭を撫でられるとゴリゴリと当たり痛かったのを思い出す。


「父さん…」


ずっと探していた家族。
やっと会えたのに、素直に喜べなかった。

変わり果てた姿…とまで言うつもりは無いが、なんだかやりきれない。



魔石としての価値が無かった為、宝石としてより一層美しく仕上げられた結果が、今手のひらに煌めきを放つ父親なのだ。

人々の欲望に飲み込まれ、それでも変わらぬ魔力の拍動を放つその姿に目を細める。


(まだ、涙を流す訳にはいかない。
この先泣くのは全てが終わった後だ)



全ての仲間を取り戻す、その日迄は―――。




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