王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-

配達屋と夜の華【王都の民】




―コンコンッ。
部屋にノックの音が響く。

人が近付く気配は感じていたが、まさか自分の部屋に用があるとは思っていなかった。

「…誰だ?こんな時間に…」

口の中で呟く。
部屋のランプに明かりを灯し、ドアに近付く。

外にいる人物から声が掛けられた。


「夜分にすみませ〜ん。
討伐部隊のドルメックさんの部屋ですよね〜?
城からの急ぎの書簡の配達に来たんすけど!」


「…ああ、今開ける」


正直、今は国王に関することには一切触れたくなかった。
しかし配達して来た者に罪は無い。
渋々ドアを開けてやる。


そこには、30そこそこの赤茶色の短髪の男が立っていた。

右手には、書簡と羽ペン。
左手は腰に当ててドルメックに笑顔を向ける。

同じ位の高さで、青い瞳と視線がぶつかった。


人懐っこく話し掛けてくる。


「あんたがドルメックさん?
これがあんた宛の書簡ね。
こっちにコイツで受け取りのサイン、頼むよ」


言うが早いか、書簡を手渡し小さなバインダーに挟まれた紙と羽ペンを差し出す。
黙って受け取り、サインを書き込む。


配達屋の男は、その間にも話し続けている。


「いやぁ、こんな時間になって悪かったな。
てっきり城で用意した宿舎の方に居るとばっかり思っててよ、探したけど居なくて、不本意ながら城の兵士に聞いたらここだって言うからよ〜。

俺ん家この辺だから、帰り掛けでいいかと思ったら仕事に時間掛かっちまって!」


ここまで一気に捲し立てる。
なんだか、妙に馴れ馴れしい気がする。
つい、訝しげな顔で見てしまった。




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