王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
それに気付いた男は、更に言葉を付け加えた。
「あ、そっか。まだ名乗ってなかったな。
俺は王都の民でテイシンってんだ。
今回のドラゴン討伐部隊、俺も戦士として参加することになってる。
よろしくな!」
思いもよらない発言に驚く。
王都の民ということは、つまり特殊な能力を持たない普通の人間ということだ。
パッと見、戦いに参加出来る何かを持ち合わせている様には見えなかった。
「…あんた、配達屋だろ?」
どうやって戦うんだ?という言葉は辛うじて飲み込む。
しかし言わずとも伝わってはいるだろう。
テイシンは少々ムッとして言った。
「フン、バカにするなよ!
俺は荷車を引かせたらファンタジア一なんだ!
今開発中の装備を乗せて、戦場を駆け回ってやるぜ」
そう言って息を巻く。
どうやら、テンションの高い人物のようだ。
余り刺激しないほうが良さそうである。
「…気分を害したならすまない。
俺はドルメック。
探す手間も掛けさせてしまったな」
素直に謝ることにした。
他人と余り関わりたくなかったので、早めに切り上げたかった。
「まぁ、いいけどよ…。
っていうか、あんたはどこの部族なんだ?
召集礼状配るリストに、あんたの名前は載ってなかったし」
ドルメックは目を細め、テイシンを見る。
聞かれるかとは思っていたが、出来れば言いたくなかった。
まだ、信用出来る人間かを推し量れていない。