王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
伸ばした手は空を切る。
青年が核石を持った手を引いた為だ。
驚いた様な、呆れた様な声音で話し掛けてきた。
「返せと言われても。これは以前に報酬で受け取ったものだが…」
何も知らないとは言え、物扱いされていることに激しい怒りが込み上げる。
物などではないと主張する。
「…いいから返せよ!俺の仲間だ!」
「『仲間』…?」
訝しむ様にドルメックを見る青年。
一陣の風が、ドルメックの前髪をさらった。
赤い瞳が晒される。
「!宝玉の民か…」
仲間という単語、そしてドルメックの赤い瞳。
この二つだけで、青年はドルメックの素性を暴いたのだ。
「なぜそれを…!?」
青年は、困ったような表情で肩を竦めた。
溜息を吐き出すとドルメックに名乗った。
「…私の名はベリル。
取り敢えずは、詳しい事情を知りたいのだがね…?」
妙に年寄り臭い口調で話す、ベリルと名乗る青年。
全てを見透かすかの様なエメラルドグリーンの瞳が、ドルメックを射抜く。
核石を目の前に焦り、半ば自暴自棄になっていた。
「っ…そんなに知りたきゃ教えてやるよ…!」
過去に起こった忌まわしいあの日から今日の今に至るまで、全てをぶち撒ける様に捲し立てた。
生まれてこのかた、こんなに喋ったのは初めての経験だった。
それも、見ず知らずの赤の他人になんて…。