王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-
そう切り出したドルメックに返って来たのは。
「…あかん」
拒絶…だった。
散々悩んで、やっと決心して切り出したのに、要件も聞かずに切り捨てられたのだ。
流石にムッとして、ドルメックが睨む。
「まだ、何も言ってないだろ?」
「同じ境遇の者同士や…言われんでもわかる。
わかっとるから、“あかん”言うとるんや」
クラウンは目を伏せ、首を横に振る。
黒地に銀の房が混じる髪が、サラサラと揺れた。
木箱から下り、ドルメックの目の前まで歩み寄る。
金色の瞳で、下から真っ直ぐ見上げてきた。
「…わしの答えは、わしだけのもんや。
あんさんの答えには成りえへん」
余りにも、穏やかにクラウンが言った。
見上げる表情は、まるで子供を慈しむ母親のようだった。
「まずは、目の前の戦いに集中せな。
ドラゴン退治して、仲間も全員救い出して…。
それでも答えが見つからなかったら、またわしを訪ねて来るとええ」
そう言って、ドルメックの二の腕辺りをバシバシ叩いた。
ドルメック自身も、本当は分かっていたのだ。
誰かの答えを模倣しても、いつかズレが生じてくると。
「じゃあ、それ以外に一つだけ教えてくれ。
【宝玉の民】って、寿命はどれ位なんだ?」
ドルメックは、そういった事情を教わる前に、仲間を失ったのだ。
「普通の人間と同じ位か?
……それとも、あんたみたいに、数百、数千と生き続けなきゃいけないのか?」
ドルメックの言わんとする意味を察してクラウンが答えた。
「それも、ドラゴン討伐の後や!
くたばるかも知れへん者に、寿命の話してもしゃーないやろ?」