春を呼ぼう
(広っ…)
ジュンの後ろ姿に案内されながら、チェルシーは家をぐるりと見回した。
サブリナと彼、2人だけだと聞いていたけれど、それには少々広すぎる気がした。
「あっ」
必要最低限の説明、それ以外は黙々と歩くジュンの黒い髪を見ていたら、昔の記憶が脳裏を掠めた。
「あ?」
なんだ、と言いたげな黒い瞳がチェルシーとバッチリ合う。
「あぁぁぁっ!!おにいちゃんだ!!」
目を見開いてチェルシーは自分で自分の言葉に納得しながら叫んだ。
「は…?」
眠気を吹き飛ばす凄まじい勢いに、ジュンは思わず動きを止めた。
英国人である筈の彼女の言葉に混じる、「おにいちゃん」という日本語の違和感。
「あれ、覚えてない??小さい頃、ラスナンの公園で、よく遊んでた!」
「小さい頃…?」
ジュンは一応記憶を辿ってはみたが、覚えていなかった。
そしておにいちゃん、と呼ばれる覚えも全くなかった。