君の左手
潰れそうな胸の痛みがあるのに。
千彰は忘れさせてくれる力…、持ってんのかな?

アユミの知らない話ばっかりするくせに、千彰の会話にぐんぐん吸い込まれてく。


野球の事だったり、歳の離れた弟が居る事。
3歳上にはお兄ちゃんが居て、いつも使い走りをされるって事。

男兄弟なんて良い事1つもないってぼやいてた。


「お前は?兄弟とかいないの?」





千彰は知らないからだもんね…―。
知らないから聞いてきた。

だけどさ、このタイミングで聞くなんて反則だよ。
何て答えればいいかわからない…。


アユミのお兄ちゃんですって言っていいの――?

うちは4人家族だよって…、言っていいのかな。
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