僕等がみた空の色





人差し指でドの音の鍵盤を軽く押す。



ポーン……



小さな音だが、しっかりとこの部屋いっぱいに響いた。


目を閉じてしばらく余韻にひたる。


……調律はしてあるみたい。


やっぱりママに気を使わせてるなぁ…。


そんなママは、気になっているだろうけどあたしの意思を尊重するように、声をかけたり部屋に入ってきたりしない。


あの日からそうだった。


あたしに何か言うことに怯えて、自分のせいになることを恐れている。


そんなママをずるいとは思わない。


だって悪いのはあたしだから。


あたしのせいでママも弱虫になってしまった。

昔の、優しくて強くて、そんなママって、どんなママだったっけ?


あたしは、たくさんの人を傷つけてる。



……忘れてない。







< 106 / 275 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop