僕等がみた空の色






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「はよ」



「あ、…おはよ」


「何、今の間」


「ないよ、そんなの」





あたしの隣の席に座る藍にどうしても自然になんか接することができない。



昨日の感じだと、星羅くんはあたしと会ったことを藍に言ってないようだし。



「結城くん、おはようー」


「おはよー、結城」




男子や、おそらく普段より一段階高い声音で挨拶をする女子にまめに返事を返す藍。




この人気者め……。




その様子を見ながらため息をひとつつく。


それに気づいた藍が尋ねる。


「なに?」


「別に?モテてるなー、と」



ちょっと皮肉を込めて言ってみたのに、藍はニヤニヤしながら、ふーん?、とこちらをじろじろ見てくる。


「…何よ」


今度はあたしが尋ねる。

「別に?」


オウム返しにする藍に言い返そうとしたとき。



「楠さん、おはよう」


「はよ、楠さん」



突然、というか、当たり前といえば当たり前なんだけど。


クラスの男子が口々に挨拶をしてくれる。

若干孤立化していたあたしが挨拶されるなんて、しかも男子にだなんて、大きな進歩だ。



つっかえながら挨拶を返していると、藍のじとーっとした視線に気づいた。




「…何よ」


「別に?」




またか。

ただ、さっきとは違って、不機嫌さに満ちた返答だ。

なんなんだろう、あたしの進歩を喜べ。





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