僕等がみた空の色
「大事なこと……」
訝しげに復唱する汐に頷き返し、藍の過去のこと、楠家に出入りしていたこと、そして星羅くんに言われたことをかいつまんで話した。
気付けば、いつもあたしたちが別々に帰る分かれ道まできていて、あたしたちはそこに立ち尽くしたままだった。
夕陽がまぶしくて、汐の表情が見えない。
「あたしが忘れてることって、なんなんだろう。なんで、藍は、黙ったままなんだろう……」
次第に浮き彫りになっていく、記憶の欠落。
確かにあたしには足りないものがあるはずなのに、違和感さえ持たず、ヒントを与えられてもなお片鱗さえ掴めない。
「自分が時々怖くなるの……」
あたしの知らないあたしがいて。
今のあたしを形成する過去は存在しているはずなのに。
ほんの一時期かもしれない。
でも、一人の存在を忘れているということは、とてつもなく恐ろしい。