Devil†Story
「…………」
クロムの表情が分からないが反応がない事にヤナは気付いて顔を覗き込む。目元は前髪で暗くなって見えていないが明らかに体の力が抜けていた。
「…アレ?もしかして…気絶しちゃった?あちゃー…やり過ぎちゃったかなぁ」
前髪から手を離すと力が抜けている事を裏付けるようにクロムの頭が力無く下を向いた。
「ついつい楽しくなって契約者とはいえ、人間なの忘れてたよ。どうしようかなー」
ヤナがそう呟くのとほぼ同時だった。気絶していたかのように見えたクロムが頭を上げ、拘束されていない足を使って油断し切っていたヤナの腹部に蹴りを入れた。
「!?」
少し後ろによろけながらヤナは腹部を押さえ、クロムの方を見た。口から血が垂れている状態ではあったが、全く変わらない目でヤナを睨みつけていた。
「いてて…なんだよ。狸寝入りとか卑怯だねぇ…」
「………言っただろ。気絶なんてサービスタイムは二度とこねぇって。てめぇだって毒とか卑怯な手を使ってきたんだからあいこだろ」
「拘束してるからって調子に乗ってんじゃねぇぞ」と睨みつけているクロムの目はまるで肉食獣の様に鋭いものであった。
「……なーんだ。まだまだ元気そうじゃない。騙されちゃったよ。でも……全く効いてない訳じゃないよねぇ」
今も尚、出血している腹部を見ながらヤナはニヤリと笑っていた。
ヤナの言う通り毒は抜けてきているが、その分骨折に内臓への傷、何より夥しい出血が増えていた。左脇腹にはナイフが深々と刺さったままになっている。明らかに良い状態ではなかった。…だがそれだけだ。痛みだけならなんとかなる。
それよりも………。
ーードクン
先程から異常に"ある色"が目に入って仕方なかった。
「………」
「…それでどう?言う気になった?ってなるわけないよねぇ。これくらいで」
「分かってんなら言うんじゃねぇよ……」
奴の言葉に辛うじて反応しているが、それよりもその色に俺は目を奪われていた。ボタッ ボタッと自身から血が滴り落ちる。
ーードクン
目につくたびに胸が高鳴る気がするのは気のせいであろうか。
俺の血………じゃなくて………。
思考の大半が"それ"に支配されつつある。
「それは失礼したねぇ。さっきからぼーっとしてるみたいだけど辛いんじゃないの?」
「…別に。ただ貧血が酷いくらいだ」
奴の言葉で俺の意識はそっちに戻った。改めて確認すると痛み自体はそこまでではなく、どちらかと言うと灼熱感が不快であった。
「貧血なだけねぇ…。あれだけ痛い目に遭ったのをもう忘れてるの?今は一旦休憩してるだけなのに」
「…俺に言わせようとしてるみてぇだけど……。あのバカ…麗弥ですらてめぇの“遊び”とやらに付き合えたんだろ。いくらやっても変わらねぇぞ」
「さっきみたいなのはやってないよ。眼帯くんの時は手加減してたもん。仕方ないじゃないか。彼は人間だし…すぐ死んじゃうからねぇ。君には手加減いらないし?言わせてみせるよ」
余裕綽々で語る奴。体を少し動かして再度、体のコンディションを確認する。…そろそろ頃合いか。俺は、僅かに手を動かした。
「…その割にはまた無駄話だな」
「まあねぇ。君は少しすると傷が塞がってくるからねぇ。……ある程度傷が治った後にまた同じ様に壊してやったら面白いかなぁって思ってさ」
「……何回も繰り返したら…君のその強靱な精神力も壊せるかもねぇ?」と俺の側に来て耳元で囁く。すぐに離れ、瓦礫に座って足を組んだ奴は笑った。
「ハッ。相変わらず余裕こいてんな。……その余裕が崩れなかった事を後悔しねえといいな」
先程奴に言った言葉を敢えて使い、ちらっと俺は手を拘束している器具を見てから左脇腹に刺さっている奴のナイフを確認する。…問題なく行けそうだ。
「…さっきならまだしも何を言ってるんだい?そんなボロボロに癖にさ」
「多少傷はついてるかもしれねえが…俺は負けを認めてないんでね」
「負けを認めてない?何を根拠に――」
奴が笑いながら俺から目をそらしてナイフを見た。その一瞬の隙を見逃さず、俺は手枷から右手を抜いた。多少大きく鳴った金属音に奴の首がこちらを向く前に左脇腹に刺さっていたナイフを抜いて奴目掛けて投げつけた。
「!?」
咄嗟に奴は持っていたナイフでそれを弾いた。その隙にコートの隠しポケットに入っていた物を取り出して奴に向けた。
―――パァン!!
「ッ!?」
先程使用していた銃とは違う、もう1つの小型拳銃で奴の体を撃ち抜いた。
クロムの表情が分からないが反応がない事にヤナは気付いて顔を覗き込む。目元は前髪で暗くなって見えていないが明らかに体の力が抜けていた。
「…アレ?もしかして…気絶しちゃった?あちゃー…やり過ぎちゃったかなぁ」
前髪から手を離すと力が抜けている事を裏付けるようにクロムの頭が力無く下を向いた。
「ついつい楽しくなって契約者とはいえ、人間なの忘れてたよ。どうしようかなー」
ヤナがそう呟くのとほぼ同時だった。気絶していたかのように見えたクロムが頭を上げ、拘束されていない足を使って油断し切っていたヤナの腹部に蹴りを入れた。
「!?」
少し後ろによろけながらヤナは腹部を押さえ、クロムの方を見た。口から血が垂れている状態ではあったが、全く変わらない目でヤナを睨みつけていた。
「いてて…なんだよ。狸寝入りとか卑怯だねぇ…」
「………言っただろ。気絶なんてサービスタイムは二度とこねぇって。てめぇだって毒とか卑怯な手を使ってきたんだからあいこだろ」
「拘束してるからって調子に乗ってんじゃねぇぞ」と睨みつけているクロムの目はまるで肉食獣の様に鋭いものであった。
「……なーんだ。まだまだ元気そうじゃない。騙されちゃったよ。でも……全く効いてない訳じゃないよねぇ」
今も尚、出血している腹部を見ながらヤナはニヤリと笑っていた。
ヤナの言う通り毒は抜けてきているが、その分骨折に内臓への傷、何より夥しい出血が増えていた。左脇腹にはナイフが深々と刺さったままになっている。明らかに良い状態ではなかった。…だがそれだけだ。痛みだけならなんとかなる。
それよりも………。
ーードクン
先程から異常に"ある色"が目に入って仕方なかった。
「………」
「…それでどう?言う気になった?ってなるわけないよねぇ。これくらいで」
「分かってんなら言うんじゃねぇよ……」
奴の言葉に辛うじて反応しているが、それよりもその色に俺は目を奪われていた。ボタッ ボタッと自身から血が滴り落ちる。
ーードクン
目につくたびに胸が高鳴る気がするのは気のせいであろうか。
俺の血………じゃなくて………。
思考の大半が"それ"に支配されつつある。
「それは失礼したねぇ。さっきからぼーっとしてるみたいだけど辛いんじゃないの?」
「…別に。ただ貧血が酷いくらいだ」
奴の言葉で俺の意識はそっちに戻った。改めて確認すると痛み自体はそこまでではなく、どちらかと言うと灼熱感が不快であった。
「貧血なだけねぇ…。あれだけ痛い目に遭ったのをもう忘れてるの?今は一旦休憩してるだけなのに」
「…俺に言わせようとしてるみてぇだけど……。あのバカ…麗弥ですらてめぇの“遊び”とやらに付き合えたんだろ。いくらやっても変わらねぇぞ」
「さっきみたいなのはやってないよ。眼帯くんの時は手加減してたもん。仕方ないじゃないか。彼は人間だし…すぐ死んじゃうからねぇ。君には手加減いらないし?言わせてみせるよ」
余裕綽々で語る奴。体を少し動かして再度、体のコンディションを確認する。…そろそろ頃合いか。俺は、僅かに手を動かした。
「…その割にはまた無駄話だな」
「まあねぇ。君は少しすると傷が塞がってくるからねぇ。……ある程度傷が治った後にまた同じ様に壊してやったら面白いかなぁって思ってさ」
「……何回も繰り返したら…君のその強靱な精神力も壊せるかもねぇ?」と俺の側に来て耳元で囁く。すぐに離れ、瓦礫に座って足を組んだ奴は笑った。
「ハッ。相変わらず余裕こいてんな。……その余裕が崩れなかった事を後悔しねえといいな」
先程奴に言った言葉を敢えて使い、ちらっと俺は手を拘束している器具を見てから左脇腹に刺さっている奴のナイフを確認する。…問題なく行けそうだ。
「…さっきならまだしも何を言ってるんだい?そんなボロボロに癖にさ」
「多少傷はついてるかもしれねえが…俺は負けを認めてないんでね」
「負けを認めてない?何を根拠に――」
奴が笑いながら俺から目をそらしてナイフを見た。その一瞬の隙を見逃さず、俺は手枷から右手を抜いた。多少大きく鳴った金属音に奴の首がこちらを向く前に左脇腹に刺さっていたナイフを抜いて奴目掛けて投げつけた。
「!?」
咄嗟に奴は持っていたナイフでそれを弾いた。その隙にコートの隠しポケットに入っていた物を取り出して奴に向けた。
―――パァン!!
「ッ!?」
先程使用していた銃とは違う、もう1つの小型拳銃で奴の体を撃ち抜いた。