Devil†Story
奥に椅子に座った奴が居た。
「…来たか」
相変わらずの威圧感を出しながら奴は言った。
「……まだ傷が塞がってないのか」
「はい…。まだ完全には塞がっておりません」
手に巻かれた包帯を一瞥した後、その言葉に奴は立ち上がる。
「……そうか」
奴は俺の目の前まで来てまるで虫ケラでも見ているかのような視線を向けてきた。…やっぱこいつは嫌いだ。特に…この目が。
「お前は任務に失敗した。ターゲットかまだ定かではないにしろ、悪魔と契約してるにしろ…人間相手にそれ程の傷を負わされてな。俺は純血の…その戦闘力を買っていたのにも関わらず敗北した。…意味が分かるな?」
「……はい」
「…ならば契約違反を受け入れて貰うぞ」
ヤナは黎音の顔を見た。
クソッ…やっぱそうなるのか…!契約違反にはそれ相応の代償がある。代償を払ったら…あいつは……!
ー黎音様と上手くやるんだよー
キシの言葉が頭を巡ったが関係ない。ここで頷いたら……俺は何の為に今までやってきたんだよ!ギュッと折れてない右手の拳を握りしめて必死に口を開いた。
「待ってください!今回は少し油断しただけです!確かに…黎音様の言う通り一度で遂行する事が出来なかったのは俺の過失です!しかし…次こそは必ずご期待に応えてみせますのでどうか!」
「………クズの言葉なんか聞きたくないな」
ーードスッ
「!?」
奴は目にも止まらない速さでまだ塞がりきっていない傷口に指を突っ込んできた。
「ッ…!」
そのまま傷口を抉られ顔が歪んだ。
「……俺にはあいつが必要だ。何がなんでも手に入れたいんだ。なのに失敗して…お前だけがお前にとって必要な奴を“助けて欲しい”なんて図々しくはないか?」
「そ…れは……」
血が垂れる光景を見ながらヤナは密かに奥歯を噛み締めた。
…何が図々しいだよ!あいつを騙して……無理矢理契約してきたくせに…!
思わず眉間にシワを寄せると奴は目を細めた。次の瞬間、突然何かで腹を殴られて思わず膝をついた。
「ッ…!!」
「………先程俺に何をされたかもう覚えていない様だな」
奴はそう低い声で言うと右手を前に出した。
「…ッ!!!」
先程、無理矢理された魔力解放を警戒し、首を押さえ後退る。しかし、それを許さないかの様に手足に何かが巻きついて床に拘束された。強い衝撃が体を襲い、眼鏡が音を立てて床を転がった。
「ウッ……!」
傷が締め付けられて痛みが伴った。体を見てみるが何が巻きついているのかは分からず、無情にも首の契約印が再び紅黒く輝き始める。心音が大きく鳴り響きあの苦しさが襲ってくる。一歩も動いていない奴は変わらず凍てつく瞳で俺を見ていた。
「……そんなにあの女を殺したい様だな。望み通りお前の手で殺させてやろう」
フードの間から覗く紅黒い目が怪しく光始める。
ーーまずい…!さっきですら…意識を保てなかったのに…魔力が殆どない状況で無理矢理解放されたら"あの状態"になる…!あれになったら……本当に俺は……!
体が変化し始め、再び意識が朦朧としてきた頭で必死にヤナは考えた。
ーねぇヤナ。……………ー
「…!」
キシの去り際の言葉を思い出し目を大きく開ける。
ー何が大切かよーく考えて発言するんだよぉー
深く息を吸ったヤナは口を開いた。
「れ…いん様……キッ…キシに……ターゲット…の…捕獲を…命じられ…られましたが……キシには………無理です……」
ーーピクッ
ヤナの言葉に黎音は右手を握った。その瞬間、体の拘束と魔力解放がなくなった。
「…来たか」
相変わらずの威圧感を出しながら奴は言った。
「……まだ傷が塞がってないのか」
「はい…。まだ完全には塞がっておりません」
手に巻かれた包帯を一瞥した後、その言葉に奴は立ち上がる。
「……そうか」
奴は俺の目の前まで来てまるで虫ケラでも見ているかのような視線を向けてきた。…やっぱこいつは嫌いだ。特に…この目が。
「お前は任務に失敗した。ターゲットかまだ定かではないにしろ、悪魔と契約してるにしろ…人間相手にそれ程の傷を負わされてな。俺は純血の…その戦闘力を買っていたのにも関わらず敗北した。…意味が分かるな?」
「……はい」
「…ならば契約違反を受け入れて貰うぞ」
ヤナは黎音の顔を見た。
クソッ…やっぱそうなるのか…!契約違反にはそれ相応の代償がある。代償を払ったら…あいつは……!
ー黎音様と上手くやるんだよー
キシの言葉が頭を巡ったが関係ない。ここで頷いたら……俺は何の為に今までやってきたんだよ!ギュッと折れてない右手の拳を握りしめて必死に口を開いた。
「待ってください!今回は少し油断しただけです!確かに…黎音様の言う通り一度で遂行する事が出来なかったのは俺の過失です!しかし…次こそは必ずご期待に応えてみせますのでどうか!」
「………クズの言葉なんか聞きたくないな」
ーードスッ
「!?」
奴は目にも止まらない速さでまだ塞がりきっていない傷口に指を突っ込んできた。
「ッ…!」
そのまま傷口を抉られ顔が歪んだ。
「……俺にはあいつが必要だ。何がなんでも手に入れたいんだ。なのに失敗して…お前だけがお前にとって必要な奴を“助けて欲しい”なんて図々しくはないか?」
「そ…れは……」
血が垂れる光景を見ながらヤナは密かに奥歯を噛み締めた。
…何が図々しいだよ!あいつを騙して……無理矢理契約してきたくせに…!
思わず眉間にシワを寄せると奴は目を細めた。次の瞬間、突然何かで腹を殴られて思わず膝をついた。
「ッ…!!」
「………先程俺に何をされたかもう覚えていない様だな」
奴はそう低い声で言うと右手を前に出した。
「…ッ!!!」
先程、無理矢理された魔力解放を警戒し、首を押さえ後退る。しかし、それを許さないかの様に手足に何かが巻きついて床に拘束された。強い衝撃が体を襲い、眼鏡が音を立てて床を転がった。
「ウッ……!」
傷が締め付けられて痛みが伴った。体を見てみるが何が巻きついているのかは分からず、無情にも首の契約印が再び紅黒く輝き始める。心音が大きく鳴り響きあの苦しさが襲ってくる。一歩も動いていない奴は変わらず凍てつく瞳で俺を見ていた。
「……そんなにあの女を殺したい様だな。望み通りお前の手で殺させてやろう」
フードの間から覗く紅黒い目が怪しく光始める。
ーーまずい…!さっきですら…意識を保てなかったのに…魔力が殆どない状況で無理矢理解放されたら"あの状態"になる…!あれになったら……本当に俺は……!
体が変化し始め、再び意識が朦朧としてきた頭で必死にヤナは考えた。
ーねぇヤナ。……………ー
「…!」
キシの去り際の言葉を思い出し目を大きく開ける。
ー何が大切かよーく考えて発言するんだよぉー
深く息を吸ったヤナは口を開いた。
「れ…いん様……キッ…キシに……ターゲット…の…捕獲を…命じられ…られましたが……キシには………無理です……」
ーーピクッ
ヤナの言葉に黎音は右手を握った。その瞬間、体の拘束と魔力解放がなくなった。