Devil†Story
「ーーそれで謝ることは出来たよ」
放課後、いつものように公園に来た輝太は2人に今日あった出来事を報告した。
「そうなんだね。…太一くんは輝太に謝ってくれたの?」
「…ううん。でも、僕は気にしてないから大丈夫!それに、太一くんも先生に言われていたし平気だよ」
輝太の答えに一瞬稀琉の表情は曇ったが、自分で納得している以上口を挟むべきではないと思い微笑んだ。
「……そっか。輝太は偉いね」
そう言って輝太の頭を撫でる。もちろん、ゆっくりとした動作で輝太が驚かないように行った。慣れてきたのか、最近はビクリと体を震わせる回数が減ってきている。撫でられた輝太は嬉しそうに笑っていた。
2人のやり取りの隣にはクロムが居たが、普段通り読書を嗜んでいた。クロムと本の間を桜の花びらが駆け抜けていった。その花びらは本に添うように風に運ばれ、今度は稀琉と輝太の間を通り抜けていく。
「ほぼ毎日見てたからあれだけど、随分咲いてきたね」
花びらを目で追った後に、八部咲きになりつつある桜の木を見た。この公園は桜が有名で、既に日中は並木道には花見をする人々が増えてきている。もちろん夜桜も美しく、一部エリアでは出店や提灯が飾られ始めていた。後、1週間もすれば人々で溢れかえる桜祭りが開催されるだろう。
「本当だね!綺麗だなぁ」
「そうだね。桜ってどうしてこんなに綺麗なんだろうね」
「僕も不思議に思ってる!他のお花ももちろん綺麗だけど、桜は特別なお花だなぁって!クロムお兄ちゃんもそう思わない?」
全く会話に入ってこないクロムに問いかける。しかし、クロムは返事をしなかった。それでも輝太はニコニコと笑っている。理由は簡単だ。普段からキリがいい所まで読み切ってから返事をしているのに気付いていたからだ。無視をされている訳ではないので、輝太は焦らずにクロムを待っていた。やがて、キリがいいところまで読み切ったのであろう。目線をこちらに向けた。
「…この国の奴等は桜を特別視しているから、そうインプットされているだけだろ」
念の為に、本についているヒモ状のしおりを移動させながら面倒そうに答えた。
「何か夢のない解答」
「事実だろ。ご当地番組は置いておいてニュースになる花は桜だけだろ」
口を尖らせて不満気に話す稀琉に適当に返す。
「紅葉もじゃない?」
「紅葉は花じゃねぇだろうが」
「そっかぁ。でも、例えそうだったとしても綺麗だよね?」
無垢な笑みを浮かべて同意を求める輝太を一瞥するが、再び本へ視線を落とした。
「原色の花よりはチカチカしねぇからな」
「も〜!なんでそんなにドライなの!綺麗だなでいいじゃんか〜!」
「うるせぇ。てめぇの価値観を俺に押し付けんな。他の花よりは見れるってだけだ、俺の感想は」
「言い方!」
そう小さな喧嘩をし始めた2人だったが、間も無く17:00を知らせるメロディが鳴り響いた。
「もうこんな時間なんだね。オレ、トイレに行ってくるね」
「勝手にしろ」
「待っててよ?」
「5分だけ待っててやる。さっさと行ってこい」
「ハーイ」
この場所からトイレまでそれなりの距離があるが、慣れているのだろう。気にする様子は見られず、稀琉はトイレへ向かって行った。変わらずクロムは本の字を目で追っていた。
「…ねぇ、クロムお兄ちゃん」
「なんだ」
これも普段と変わらずこちらを見ないクロムの側に行く。
「あのね!さっきお兄ちゃんは他の花よりも見られるだけって言ったけど、僕ね、綺麗なところ知ってるんだ!そこの桜は他の桜より綺麗なんだよ!特に夜が綺麗なの!」
「そうか」
「うん!それでね!テレビで見たんだけどね?4日後にだいぶ満開になるみたいなんだ!」
「あぁ」
「だからね?4日後の夜の12時に一緒に見ようよ!クロムお兄ちゃんに見せたいの!」
「あぁ」
「!」
まさかすんなり快諾されるとは思っていなかった輝太は驚いてクロムを見る。僅かに眉間にしわが寄っており、字面を追っていた。今までも読書中にそういった表情を浮かべる事もあったので嘘ではないと思い、輝太の表情は綻んだ。
「ありがとう!」
「あぁ」
「お待たせー!」
「!」
そこへタイミングよく稀琉が戻って来た。時計を見た輝太は慌てたように駆け出した。
「大変だ!遅くなったらお母さんに怒られちゃう!じゃあまたね!稀琉お兄ちゃん!クロムお兄ちゃん!」
「うん。気を付けて帰るんだよー!」
「うん!クロムお兄ちゃん!約束だからねー!」
そう叫びながら輝太は公園を後にした。
「ーー?約束?何か約束したの?」
いまだに本を読んでいるクロムに問い掛ける。先程よりもの表情は和らいでおり、栞を挟んで本を閉じてから視線を稀琉に向ける。
「あ?なんのことだ?」
「え?今、輝太が「約束だからねー!」って言って帰ったから」
「ハァ?何言ってーー」
そこまで話してから初めて気づく。
「あー……やられた…」
片手で頭を抱えたクロムは舌打ちをした。実は先程、輝太と会話していた時は本の内容に過集中しており殆ど聞いていなかったのだ。要は適当に返事をしていた状態であった。しかし、耳を通して言葉として頭に輝太が言っていた事は残っていたので安易に約束していたことに対しての舌打ちだった。
「どうしたの?」
「いや……」
面倒そうにしつつも約束を守る気でいるのは明白であった。それを見た稀琉は先程のように口を尖らせる。
「本当にクロムは輝太には甘いよね〜。オレ等とは約束してくれないのに」
「いや、そんなんじゃねぇーー」
突如言葉を切ったクロムはある事に気付いた。
……つーか、こいつが時間管理(17:00には帰宅するのは変わらないのにも関わらず、その時間を超えてからトイレに行った事)出来てなかったせいで、いい所まで読んじまってヘマして適当に返事しちまったんだよな?なら9割9部こいつのせいじゃねぇか。
そう思うと呑気に口を尖らせ、まるで被害者のように振る舞っている稀琉に無性に腹が立ってきた。
「つーかてめぇが遅えからこうなったんだろうが」
「えー!?なんだか分からないけど八つ当たりしないでよ!オレ、知らないよ!」
「うるせぇ!責任とってぶん殴らせろ」
「イヤだよ!」
本をコートのポケットに入れたクロムは稀琉を睨み付けると間髪入れずに殴り始めた。それを「やめてってば!」と言いながら稀琉は避けながら、2人は帰路についた。
放課後、いつものように公園に来た輝太は2人に今日あった出来事を報告した。
「そうなんだね。…太一くんは輝太に謝ってくれたの?」
「…ううん。でも、僕は気にしてないから大丈夫!それに、太一くんも先生に言われていたし平気だよ」
輝太の答えに一瞬稀琉の表情は曇ったが、自分で納得している以上口を挟むべきではないと思い微笑んだ。
「……そっか。輝太は偉いね」
そう言って輝太の頭を撫でる。もちろん、ゆっくりとした動作で輝太が驚かないように行った。慣れてきたのか、最近はビクリと体を震わせる回数が減ってきている。撫でられた輝太は嬉しそうに笑っていた。
2人のやり取りの隣にはクロムが居たが、普段通り読書を嗜んでいた。クロムと本の間を桜の花びらが駆け抜けていった。その花びらは本に添うように風に運ばれ、今度は稀琉と輝太の間を通り抜けていく。
「ほぼ毎日見てたからあれだけど、随分咲いてきたね」
花びらを目で追った後に、八部咲きになりつつある桜の木を見た。この公園は桜が有名で、既に日中は並木道には花見をする人々が増えてきている。もちろん夜桜も美しく、一部エリアでは出店や提灯が飾られ始めていた。後、1週間もすれば人々で溢れかえる桜祭りが開催されるだろう。
「本当だね!綺麗だなぁ」
「そうだね。桜ってどうしてこんなに綺麗なんだろうね」
「僕も不思議に思ってる!他のお花ももちろん綺麗だけど、桜は特別なお花だなぁって!クロムお兄ちゃんもそう思わない?」
全く会話に入ってこないクロムに問いかける。しかし、クロムは返事をしなかった。それでも輝太はニコニコと笑っている。理由は簡単だ。普段からキリがいい所まで読み切ってから返事をしているのに気付いていたからだ。無視をされている訳ではないので、輝太は焦らずにクロムを待っていた。やがて、キリがいいところまで読み切ったのであろう。目線をこちらに向けた。
「…この国の奴等は桜を特別視しているから、そうインプットされているだけだろ」
念の為に、本についているヒモ状のしおりを移動させながら面倒そうに答えた。
「何か夢のない解答」
「事実だろ。ご当地番組は置いておいてニュースになる花は桜だけだろ」
口を尖らせて不満気に話す稀琉に適当に返す。
「紅葉もじゃない?」
「紅葉は花じゃねぇだろうが」
「そっかぁ。でも、例えそうだったとしても綺麗だよね?」
無垢な笑みを浮かべて同意を求める輝太を一瞥するが、再び本へ視線を落とした。
「原色の花よりはチカチカしねぇからな」
「も〜!なんでそんなにドライなの!綺麗だなでいいじゃんか〜!」
「うるせぇ。てめぇの価値観を俺に押し付けんな。他の花よりは見れるってだけだ、俺の感想は」
「言い方!」
そう小さな喧嘩をし始めた2人だったが、間も無く17:00を知らせるメロディが鳴り響いた。
「もうこんな時間なんだね。オレ、トイレに行ってくるね」
「勝手にしろ」
「待っててよ?」
「5分だけ待っててやる。さっさと行ってこい」
「ハーイ」
この場所からトイレまでそれなりの距離があるが、慣れているのだろう。気にする様子は見られず、稀琉はトイレへ向かって行った。変わらずクロムは本の字を目で追っていた。
「…ねぇ、クロムお兄ちゃん」
「なんだ」
これも普段と変わらずこちらを見ないクロムの側に行く。
「あのね!さっきお兄ちゃんは他の花よりも見られるだけって言ったけど、僕ね、綺麗なところ知ってるんだ!そこの桜は他の桜より綺麗なんだよ!特に夜が綺麗なの!」
「そうか」
「うん!それでね!テレビで見たんだけどね?4日後にだいぶ満開になるみたいなんだ!」
「あぁ」
「だからね?4日後の夜の12時に一緒に見ようよ!クロムお兄ちゃんに見せたいの!」
「あぁ」
「!」
まさかすんなり快諾されるとは思っていなかった輝太は驚いてクロムを見る。僅かに眉間にしわが寄っており、字面を追っていた。今までも読書中にそういった表情を浮かべる事もあったので嘘ではないと思い、輝太の表情は綻んだ。
「ありがとう!」
「あぁ」
「お待たせー!」
「!」
そこへタイミングよく稀琉が戻って来た。時計を見た輝太は慌てたように駆け出した。
「大変だ!遅くなったらお母さんに怒られちゃう!じゃあまたね!稀琉お兄ちゃん!クロムお兄ちゃん!」
「うん。気を付けて帰るんだよー!」
「うん!クロムお兄ちゃん!約束だからねー!」
そう叫びながら輝太は公園を後にした。
「ーー?約束?何か約束したの?」
いまだに本を読んでいるクロムに問い掛ける。先程よりもの表情は和らいでおり、栞を挟んで本を閉じてから視線を稀琉に向ける。
「あ?なんのことだ?」
「え?今、輝太が「約束だからねー!」って言って帰ったから」
「ハァ?何言ってーー」
そこまで話してから初めて気づく。
「あー……やられた…」
片手で頭を抱えたクロムは舌打ちをした。実は先程、輝太と会話していた時は本の内容に過集中しており殆ど聞いていなかったのだ。要は適当に返事をしていた状態であった。しかし、耳を通して言葉として頭に輝太が言っていた事は残っていたので安易に約束していたことに対しての舌打ちだった。
「どうしたの?」
「いや……」
面倒そうにしつつも約束を守る気でいるのは明白であった。それを見た稀琉は先程のように口を尖らせる。
「本当にクロムは輝太には甘いよね〜。オレ等とは約束してくれないのに」
「いや、そんなんじゃねぇーー」
突如言葉を切ったクロムはある事に気付いた。
……つーか、こいつが時間管理(17:00には帰宅するのは変わらないのにも関わらず、その時間を超えてからトイレに行った事)出来てなかったせいで、いい所まで読んじまってヘマして適当に返事しちまったんだよな?なら9割9部こいつのせいじゃねぇか。
そう思うと呑気に口を尖らせ、まるで被害者のように振る舞っている稀琉に無性に腹が立ってきた。
「つーかてめぇが遅えからこうなったんだろうが」
「えー!?なんだか分からないけど八つ当たりしないでよ!オレ、知らないよ!」
「うるせぇ!責任とってぶん殴らせろ」
「イヤだよ!」
本をコートのポケットに入れたクロムは稀琉を睨み付けると間髪入れずに殴り始めた。それを「やめてってば!」と言いながら稀琉は避けながら、2人は帰路についた。