Devil†Story

―数日後―


「ここかしら…」


白のワンピースを着て、カンカン帽を被った女性がブラック・カフェの前で呟いた。深呼吸をしてから決意したように頷き店内へ入って行った。


ｶﾗﾝ…ｶﾗﾝ…


「いらっしゃいませ。お一人様でしょうか？」


店員が女性に話し掛ける。


「あっあの…ここにレイちゃん…じゃなかった。麗弥という子…働いてませんか？」


「麗弥…さんですか？あの…失礼ですが貴女は？」


その店員はブラック・カフェの裏を知っている店員だった。なので裏の情報は無闇に外部に洩らさないという教育を受けていた。彼女が何者か分からない内は守秘義務を真っ当しなければならない。


彼は彼女の問いを待った。彼女は少しオロオロしながら口を開いた。


「あっ、私は………」


彼女は自分の説明をした。


「…えぇ!?」


彼はそれを聞いて驚きながらも考えた。


どうしよう…。


これが本当なら中に入れても大丈夫だろうけど…。


警察やスパイとかだったら…消されるのは俺だ…。…オーナーに確認した方がいいだろうか？でもあまりここで時間を掛けるとかえって怪しいか…？暫く考えていた時だった。


？「あっ、石川さん」


後ろから聞き慣れた声がした。石川と呼ばれたその青年は後ろを振り返る。


石「…稀琉さん！」


そこに居たのは買い物袋を持った稀琉だった。どうやら買い出しに出掛けていたようで手には抱えるほどの荷物を持っていた。


…アレで前が見えるのだろうか？いや…見えないから彼女のことに触れないのか…。


石川がそう思うのは無理がなかった。抱えるように持っている買い物袋は稀琉の頭よりも高かった。いつもの稀琉なら先にお客さんに挨拶をするはずだ。それをしない時点で前が見えていないことは明白であった。


固まる石川に疑問を抱き体勢を見えるように斜めに直した。


稀「…あっ！お客さんが居たんですね！前が見えておらず失礼致しました。いらっしゃいませ」


稀琉がいつものように笑顔で挨拶をする。そこで彼女は様子でハッとした後に嬉しそうに話しかけてきた。


？「もしかして…稀琉くんっ？」


石・稀「えっ？」


石川も稀琉もきょとんとしていたが、数秒後、稀琉も再度体勢を変えてその人物の顔が見る。顔を見て誰なのかに気付いた様子だった。



稀「あー！！」


稀琉は持っていた買い物袋を落としそうなくらいオーバーリアクションをしつつ無邪気に笑った。