Devil†Story
ロ「……どうやって虫取った?」
以前も話したが、クロムは虫が苦手で近くに居るのもダメなくらいだ。魔物である糸花とギリギリ戦えたが、触ることが出来ないのを知っているロスは恐る恐る尋ねた。
案の定クロムは苦虫を潰したような顔で気持ち悪そうに答えた。
ク「剣で剥がして……落ちた瞬間銃でぶっ殺した。吐きそうだった。剣は手袋して洗って拭いて消毒した。マジで吐きそうだった」
「コートも捨てた。足でも残ってたらと思うと…吐きそうだ」と嫌そうに…再び寒気がしたのか腕をさすりながら…余程気持ち悪かったのか何度も「吐きそう」と繰り返しながら言い放った。
その発言で分かるようにクロムは生きている虫はもちろん死骸を見るのもダメなタイプ(以前戦った糸花の切り落とした足を見ただけでも激しい吐き気に襲われていた)
きっと虫を殺した時の様子も耐えられないものであったのであろう。それを察していたロスは「あー……」と同情するような声をあげる。
ロ「お前……だからあの時のコート捨てたのか……。それ言ったらグロいの全般ダメな気がするけどなー…。でも内臓ついてたって平気だよな…」
ク「アイツらは病原体だ。キモいし無理。それに虫は汚ねぇとこにいんだろ。あぁいうのがマジで無理」
汚いものが嫌いなクロムは更に激しく腕をさすりながら言葉を吐き捨てた。その後「気持ち悪い」とか「思い出すと吐き気がする」だのぶつぶつ呟き始めた。それを見たロスは「あー…ごめん。もうわかったから」とこれ以上クロムが思い出さないように話を切り上げたのであった。
ロ「とりあえずそれは置いといて…なるほどなぁ。それ以外は俺の指示通りしてただけだったってことだ」
ク「あぁ。それでどうだ?血印は落ち着いたか?」
ロ「あーもう大丈夫だな。充分“魂”も集まったし血印にも剣にも血も吸わせてやったし」
ク「なら良い。つーか…気にかけるなら必要のない俺より稀琉だと思うぜ」
ポケットに手を入れ、歩きながらクロムは他人事のように呟いた。
ロ「なんで?」
ク「ん」
ロスが聞くとクロムは手を入れたポケットからあの時に拾った黒薔薇を取り出した。
ロ「おっ?黒薔薇なんて珍しいな」
ク「…これただの薔薇じゃねぇよ」
そう言ってクロムはロスに薔薇を渡した。
ク「俺が見付けた時にはもう黒かったが…拾い上げたら血が垂れやがった。稀琉の血じゃないのにオカシイだろ」
ロ「あー…本当だ。ただの薔薇じゃない。コレは…魔界の薔薇を改良したやつだな」
珍しそうに黒薔薇を見ながらロスは呟いた。
ク「何にせよ…コレを見て稀琉は吐いたんだろ。何もねぇのにアイツが吐いたりするかよ」
ロ「確かに…今はだいぶ良いけどさっき肩貸してた時は心ここに在らずって感じだったし」
ク「俺を見張るのも邪魔しなきゃ結構だが…当分は稀琉に目を光らしとけって刹那に言っとけよ」
ロ「………」
今までヘラヘラと笑っていたロスが急に喋らなくなった。その事に気付いたクロムが後ろを振り返る。
ク「…どうした?」
ロ「……いや。なんでもなーい」
一瞬鋭い眼光を宿していたロスであったがまたいつものようになんとも読めない顔で笑った。
ロ「つーか見張ってたのに気付いてたんだろ?そもそも」
ク「…そりゃあな。あんなピンポイントで2人同時に来られればな。しかもやけに白々しかったし」
クロムの言葉にロスは「ですよねー」と言って黒薔薇を返した。その黒い花弁を見つつ部屋の中に入る。
ク「黒薔薇…か」
クロムはロスから薔薇を受けとると、ボソッと呟いた。
ロ「どした?」
ク「いや…なんでもない」
素っ気なく黒薔薇を花瓶に入っている薔薇と一緒に入れた。この薔薇は「部屋が寂しくならないように」と稀琉が持ってきたものだ。
何気なく窓を見るとやけに水色の空が目について眩しさを感じる。眩しさを逸らすように視線を下げると麗弥が持ってきた"桜の中の水色"が並べられていた。それを見て無意識にクロムは呟いた。
ク「……結末は聞いてしまったが読んでみるか。新作も読み終わっちまったからな」
ロ「…………」
その言葉を聞いてロスは再び鋭い目つきになっていた。ロスの頭の中には、あの日書斎にクロムを探しに来て見つけた際に楽しそうに話していた麗弥と満更でもないような感じで返すクロムの姿が浮かんでいた。
あんな感じで話をしているクロムを見たのは久方ぶりだった。和やかな雰囲気に普通は暖かい感情で見れるものだろう。しかしそれを見ていたロスの中には黒い感情が渦巻いており同時にある人物の顔が浮かんだ。
ロ「……ちょっと言ってやんねぇとな」
ク「なんか言ったか?」
ボソリと呟いたロスにクロムがチラリとロスの方を向いた。それより先に扉の方を向いて歩き出す。
ロ「……んーん。なんでもない。ちょっと出てくるな〜」
片手を上げてそれだけ言うと扉を開けて出て行った。
静寂が訪れた部屋の扉を少し不思議そうに見ていたクロムだったがすぐにベットへ寝転び本棚に目を移してある一冊の本を取り出して読み始めた。…桜の中の水色を。
以前も話したが、クロムは虫が苦手で近くに居るのもダメなくらいだ。魔物である糸花とギリギリ戦えたが、触ることが出来ないのを知っているロスは恐る恐る尋ねた。
案の定クロムは苦虫を潰したような顔で気持ち悪そうに答えた。
ク「剣で剥がして……落ちた瞬間銃でぶっ殺した。吐きそうだった。剣は手袋して洗って拭いて消毒した。マジで吐きそうだった」
「コートも捨てた。足でも残ってたらと思うと…吐きそうだ」と嫌そうに…再び寒気がしたのか腕をさすりながら…余程気持ち悪かったのか何度も「吐きそう」と繰り返しながら言い放った。
その発言で分かるようにクロムは生きている虫はもちろん死骸を見るのもダメなタイプ(以前戦った糸花の切り落とした足を見ただけでも激しい吐き気に襲われていた)
きっと虫を殺した時の様子も耐えられないものであったのであろう。それを察していたロスは「あー……」と同情するような声をあげる。
ロ「お前……だからあの時のコート捨てたのか……。それ言ったらグロいの全般ダメな気がするけどなー…。でも内臓ついてたって平気だよな…」
ク「アイツらは病原体だ。キモいし無理。それに虫は汚ねぇとこにいんだろ。あぁいうのがマジで無理」
汚いものが嫌いなクロムは更に激しく腕をさすりながら言葉を吐き捨てた。その後「気持ち悪い」とか「思い出すと吐き気がする」だのぶつぶつ呟き始めた。それを見たロスは「あー…ごめん。もうわかったから」とこれ以上クロムが思い出さないように話を切り上げたのであった。
ロ「とりあえずそれは置いといて…なるほどなぁ。それ以外は俺の指示通りしてただけだったってことだ」
ク「あぁ。それでどうだ?血印は落ち着いたか?」
ロ「あーもう大丈夫だな。充分“魂”も集まったし血印にも剣にも血も吸わせてやったし」
ク「なら良い。つーか…気にかけるなら必要のない俺より稀琉だと思うぜ」
ポケットに手を入れ、歩きながらクロムは他人事のように呟いた。
ロ「なんで?」
ク「ん」
ロスが聞くとクロムは手を入れたポケットからあの時に拾った黒薔薇を取り出した。
ロ「おっ?黒薔薇なんて珍しいな」
ク「…これただの薔薇じゃねぇよ」
そう言ってクロムはロスに薔薇を渡した。
ク「俺が見付けた時にはもう黒かったが…拾い上げたら血が垂れやがった。稀琉の血じゃないのにオカシイだろ」
ロ「あー…本当だ。ただの薔薇じゃない。コレは…魔界の薔薇を改良したやつだな」
珍しそうに黒薔薇を見ながらロスは呟いた。
ク「何にせよ…コレを見て稀琉は吐いたんだろ。何もねぇのにアイツが吐いたりするかよ」
ロ「確かに…今はだいぶ良いけどさっき肩貸してた時は心ここに在らずって感じだったし」
ク「俺を見張るのも邪魔しなきゃ結構だが…当分は稀琉に目を光らしとけって刹那に言っとけよ」
ロ「………」
今までヘラヘラと笑っていたロスが急に喋らなくなった。その事に気付いたクロムが後ろを振り返る。
ク「…どうした?」
ロ「……いや。なんでもなーい」
一瞬鋭い眼光を宿していたロスであったがまたいつものようになんとも読めない顔で笑った。
ロ「つーか見張ってたのに気付いてたんだろ?そもそも」
ク「…そりゃあな。あんなピンポイントで2人同時に来られればな。しかもやけに白々しかったし」
クロムの言葉にロスは「ですよねー」と言って黒薔薇を返した。その黒い花弁を見つつ部屋の中に入る。
ク「黒薔薇…か」
クロムはロスから薔薇を受けとると、ボソッと呟いた。
ロ「どした?」
ク「いや…なんでもない」
素っ気なく黒薔薇を花瓶に入っている薔薇と一緒に入れた。この薔薇は「部屋が寂しくならないように」と稀琉が持ってきたものだ。
何気なく窓を見るとやけに水色の空が目について眩しさを感じる。眩しさを逸らすように視線を下げると麗弥が持ってきた"桜の中の水色"が並べられていた。それを見て無意識にクロムは呟いた。
ク「……結末は聞いてしまったが読んでみるか。新作も読み終わっちまったからな」
ロ「…………」
その言葉を聞いてロスは再び鋭い目つきになっていた。ロスの頭の中には、あの日書斎にクロムを探しに来て見つけた際に楽しそうに話していた麗弥と満更でもないような感じで返すクロムの姿が浮かんでいた。
あんな感じで話をしているクロムを見たのは久方ぶりだった。和やかな雰囲気に普通は暖かい感情で見れるものだろう。しかしそれを見ていたロスの中には黒い感情が渦巻いており同時にある人物の顔が浮かんだ。
ロ「……ちょっと言ってやんねぇとな」
ク「なんか言ったか?」
ボソリと呟いたロスにクロムがチラリとロスの方を向いた。それより先に扉の方を向いて歩き出す。
ロ「……んーん。なんでもない。ちょっと出てくるな〜」
片手を上げてそれだけ言うと扉を開けて出て行った。
静寂が訪れた部屋の扉を少し不思議そうに見ていたクロムだったがすぐにベットへ寝転び本棚に目を移してある一冊の本を取り出して読み始めた。…桜の中の水色を。