Devil†Story
「そうなの?」

ロスが少し首を傾げながら、聞いた。

「…………」

稀琉は目を伏せてから、刹那を見た。

刹那は黙って頷いた。

「……うん。オレ…昔から…普通の人より…怪我とか治るの早いんだ」

「だったら、何故隠す。別に大したことじゃないだろう」

クロムが呆れたように言った。

「……昔…ね?それで気味悪がれてた…から…」

悲しそうに稀琉は呟いた。やっと、心を許せる友達に出会えたのに、そんなことで失いたくなかったのだろう。

「にゃるほどねー。でもさー、稀琉。誰もそんな下らないことでそんなこと思わないってー。なぁ?」

ロスが、クロムの方を向いて聞いた。

クロムは面倒臭そうに腕を組ながら答えた。

「…そんな、負け犬共の遠吠えに怯えるなんてくだらないな。そんなの体質だろ。それに俺には関係ない」

「あららー、素直じゃないなー、クロム。あのな、稀琉。稀琉はさ、そういう体質だったから…からかわれてただろうけど、クロムはこの見た目だけで言われてたんだぜ?そんなに気にすることじゃないと思うけど?」

「えっ?」

ロスの言葉に稀琉はクロムを見た。

クロムが…見た目で何か言われてたの…?

クロムは「余計なことを言ってんじゃねぇよ」と横を向いた。

その横顔は男性にしては、美しい。

それなのに、何か言われてたのだろうか?

稀琉が不思議そうにクロムを見ていたので、クロムはまた面倒臭そうに溜め息をつきながら答えた。

「……俺の見た目…黒髪に紅い目だろう?だから…ガキの頃は“悪魔”とか“化物”って言われてたんだよ」

「えっ……」

クロムの言葉に稀琉は驚く。

そんなことで…悪魔や化物って呼ばれてたっていうんだろうか?

「実際…俺が何かしたってわけじゃないけどな。まっ、ガキなんて人と違うだけでからかいたくなるからな。…誰かが助けてくれるわけでもなかった。気味悪かったんだろ。この目がよ。何もしなかったから尚更な」

別にどうでも良さそうにクロムは言った。

誰もということは、周りの大人も助けてくれなかったのだろう。

…そういえば、始めてだな…。

クロムの昔話を聞くのは…。

稀琉はクロムの目を見る。その目は暗く冷たい闇が覆っている。

彼の目には一寸の光さえ、宿っていなかった。
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