Devil†Story
―クロム Side―

「おーい、そんなに怒るなって〜」

ロスが後ろから反省の色を一切伺えないような声で言ってくる。

「話し掛けんな、ハゲ」

「ハゲてません〜。なんだよ、抱っこしただけで…」

「………」

その容易く“抱き抱えられた”のが腹が立つ。しかも…あんなに暴れたのに何故、平気なんだこいつは。

「………なぁ」

「ん〜?」

「俺はそんなに…力がないか?」

元から筋肉がつくような肉すらないのは分かっていたが…人並みだと思っていた。

なのに、この馬鹿は……

「うん。女並み…いや、下手したら女よりないんじゃないか?」

なんて言ってきやがった。

「もう、良い」

「握力なんか小学生並みじゃ――」

「もう、良いって言ってんだろ!話し掛けんな!」

「なんだよ、自分から聞いたくせに〜」

「うるさい。黙れ」

嗚呼、腹が立つ。

だが確かに…あのメガネに両腕を捕まれた時も動けなかったし、下手したら稀琉にも腕力だけでは勝てないかもしれない。

つーか、最近やられっぱなしじゃねぇか。

あの変な声が聞こえて…トランス状態みたいな状態で勝ったって…癪なんだよ。

少し……訓練でもするか。

負けるなんて…死んでもプライドが許さない。


俺はそう思いながら、まだ何か言ってるロスをほっときながら自室に向かった。
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