Devil†Story
暫く沈黙が続いたが、その沈黙をクロムが破った。

「……まっ、どうでも良いけど」

そう言うクロムはいつもと同じだった。

「……そうか」


ロスは特に何も言わずに返事だけした。

「ちょっ…やめてよ、麗弥!」

稀琉のその声に2人が見ると、今度は稀琉の顔を麗弥は引っ張ろうとしていた。
「えーやん、笑ったんやから〜」

ニヤニヤ笑いながら麗弥は稀琉に歩み寄る。

「ハァ…まだやってたのか。馬鹿竜崎」

呆れながらそう言うクロムに麗弥はすぐ言い返した。

「ちょっ!名字で呼ばんといてーや!距離感じるやん!」

「…ハァ?いつお前と俺が“ナカヨシ”になったんだ?お前と距離を近付けた覚えなんかない」

「ひどっ!仲良しやんか!」

「勝手にほざいてろ」

「ほんま、何なん、この人!」

その時、麗弥の頬を誰かがつまんだ。

「ふぇ!?ひゃれ!?(誰!?)」
見てみると、そこには微笑を浮かべたロスが居た。

「いやー、なんかつまみたくなっちゃって♪」

「ひゃ…ひゃんへーら!?(な…なんでーや!?)」

「なんとく」

ニッコリと笑うロスに麗弥は唖然。

「やはりキモイ顔になりたいんだな、テメェは」

更に呆れたようにクロムはそう言った。

「ひっ…ひらふっへ!(ちっ…違うって)――」

そこまで言った麗弥は何かを考え、やがてニヤリッと笑った。

「何?どーしたの?」

ロスが麗弥の頬をつまむのを止めて聞いた。

その頬は真っ赤になっている。

「ふっふっふ…」

「キメェ」

「せやから!なんで、クロムはそう言葉にオブラートを――「じゃあ、“気持ち悪い”…か?」

「〜ッ!こっ…これでも喰らえー!」

麗弥はそう言うと、クロムに飛び付いた。

「あぶねっ…何しやがる!」

それを避けたクロムは麗弥に文句を言った。

「嫌がらせや!」

そう言う麗弥はまたクロムに飛び付く。

「嫌がらせだって自覚してるんならやめろ!」

それを更に避けたクロムはそう言い返す。

「うるさいわー!」

「この…」

また向かってきた麗弥を避けようとした時だった。

――ガシッ

「なっ!ロス!?」

ロスが後ろからクロムの両腕を押さえた。

「いや、いつもクールなお前の綺麗な面を崩してみたくて」

「ふざけんな!離せ、変態!」

大暴れするクロムだったが、やはりロスの方が力が強い。

元々悪魔であるロスは人間より遥かに力が強いのだ。

力に自信のないクロムを押さえ込む事など容易いことだった。


しかし、それを知らない他の2人はやはりクロムが力がないと感じるのだ。

「ふっふっふ…」

「!」

それを見た麗弥はニヤリッと笑いながらクロムに近付く。

「バッ…馬鹿!離せ!」

「動けへんの?クロム〜?」

「テメェ、ふざけんな!離せ!!」

「動けへん、クロム程…こわないことなんかあらへんからな〜?」

「テメェ!おい、稀琉!この馬鹿を止めろ!」

「えっ?」

突然振られた稀琉は最初なんだか分からずに、すぐに動けなかった。

「あっ!そういう――」

稀琉が理解した時は時すでに遅し。

「ぐにぃーん」

「ふぁ!?ふぇめぇ!(あぁ!?テメェ!)」

クロムの頬を麗弥が左右に引っ張っていた。

「ぷっ…アハハ!!!」

ロスはそのクロムの顔を見て爆笑していた。

もちろん、麗弥も笑っている。

「ふぉろ…!ふぁらへ!ふぉろふろ!(この…!離せ!殺すぞ!)」

そして、その顔を見て稀琉もクスクスと笑った。

「アハハ!クロムもこんな顔できるんやな!」

「アハハ!!!」

「確かに、クロムのこんな顔、なかなか見れないよね」

あの刹那ですら笑っていた。

「ちょっ…そろそろやめた方が良いんじゃ…」

稀琉が心配そうにそう言った。

「大丈夫やって〜!」

麗弥は稀琉の方を見ながら、そう言った。

しかし、次の瞬間すぐ青ざめた顔で「れ、麗弥!本当にもうやめた方が良いよ。前、前!」としきりにクロムの方を指差している。

「へっ?」

きょとんとしている麗弥の腕を誰かが掴んだ。麗弥は後ろに殺気を感じて恐る恐る振り返る。

そこには、いつの間にかロスから逃れたクロムの姿があった。

「ふぇ!?いつの間にじ…自由に…!」

慌てて手を離す。クロムは膝をついて暫く頬を押さえた。その間、麗弥の手を掴んだままだ。

「っ…テメェ…よくもまぁやってくれたな…」

ギロリと睨んだクロムの目の恐ろしいこと、恐ろしいこと。

「なっ、なんで離すん!?ロス!」

「いや、もう良いかなって思って」

そう言うロスはニコリと笑った。
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