Devil†Story
「こちらです」

怜姫さんに案内された場所は豪華な洋式の屋敷と呼ぶに相応しいところだった。

「ここが……」

「先程も説明致しましたが、この扉を開けた先に10名程…主のご迷惑になる方々がいらっしゃいます。どうかお願い致します」

「分かりました。じゃあ…怜姫さんは安全な場所に居てください。すぐに済みますから」

オレはそう言うと相棒である、ワイヤーに銀の重石状の刃物を付けた。

怜姫さんは「承知致しました。よろしくお願い致します」と言って、屋敷の裏に回った。

さて…どうしようかな。


怜姫さんの話を聞く限りそこらのチンピラが遊ぶお金を盗む為に入ったようだから、喧嘩慣れしてるだろうけどオレからしたら一般人と等しい。

だったら…正面から入って早めに終わらせた方が良いかな。

怜姫さん…血とか死体、大丈夫かな。

血にまみれたオレを見て…怖がらないと良いな…。

いくら感情が感じられない目をしてるとはいえ、怜姫さんは女性だし何より一般人だ。

怖い思いはして欲しくない。

だったら、暴れられる前に…さっさと片を付ける方が良いよね。

オレはそう思うと、堂々と正面の扉から中に入った。

――ギィィ

「あん!?なんだぁ!?テメェ!」

中に入るなり中にはナイフを持った男がおり、そう話し掛けてきた。

見えるとこにいるのは、3人。

ざっと見た感じ、やはりただのチンピラのようだ。

「こんばんは、皆さん。こんな夜遅くに…他人の家に居るなんて迷惑ですし、不法侵入ですよ」

オレは指輪に仕込んでいるワイヤーを確かめながらそう言った。

「なんだぁ、クソガキ。テメェだってそーだろうがよ」

「オレは頼まれて来たんです」

「テメェみたいななよっちぃガキに何、用があんだよ!」

「ギャハハ!」と、笑う男達。

ハァ……失敗した。

こんな人達にまともに返したってまともに返ってくるわけないよね。

「大体よぉ、なんだぁ?その頭」

「!」

男の人は近付いてきて、オレの首にナイフを当てた。

「金髪なんざ…随分調子に乗ってんじゃねぇか」

「いた…」

そう言うとチンピラはオレの髪の毛を空いてる手で掴んだ。

あぁ、もう…乱暴だなぁ…。

やっぱり、会話しない方が良かった。

会話すると、いくらこんな人達でも殺りにくくなっちゃ――

そう思っていた時だった。

「帽子なんざ、被ってたって駄目だぜぇ、ボク?その、調子に乗った頭を隠したってよ!」

「!」

そう言ってチンピラは稀琉の帽子に触れ、外そうとした。しかし、その瞬間――

――ガシッ

「いっ!」

稀琉は素早くその手を掴み、捻った。

――ミチミチミチ…

「いだだだ!」

そのあまりの強さにさっきの余裕な態度は何処へやら、チンピラは顔をしかめ首に近づけていたナイフを落とした。

「おい、いくら芝居だからってナイフ落とすなよ」

しかし、周りで見ていたチンピラはそのことに全く気付いてはいない所か、ふざけてるとしか思っていないようだ。

「う…嘘じゃな…!いてぇ!」

捻られている方は必死に稀琉から逃れようとするが、それも叶わない。

すると、今まで黙っていた稀琉が口を開いた。

「――帽子には触らないで貰えますか?これは大事な人から貰ったものですし、オレは他人から…特に貴方方の様な人達に帽子を取られるのが嫌いなんです」

その稀琉の声はいつもより断然低い。普段の彼からは想像もつかない厳しい顔で稀琉はチンピラにそう言い放った。

「ハァ?なんだよ、その理由。だったら、かぶってくんな――いたた!」

稀琉に捕まれている男はまだそんなことを言う。

ハァ……本当に会話しなければ良かった。

時間の無駄だし、そろそろ殺るかな。

稀琉はワイヤーを密かに出す。

「貴方方とは何を話しても会話にならないようですね。…次は恨まれない人生を」

稀琉は誰かを殺める時、必ずそう言っていた。

恨みがあるから、こんな風になる。

確かに最近の依頼理由は…くだらないものが多くなってきてるけど、それでもやっぱり恨まれないければこんな事にならないのだ。

でも、この言葉は自分自身の戒めにも使っている。

オレの“罪”に対する戒めの。

「テメェ、何訳わかんねぇこと言ってるんだ!」

考え事をしていた稀琉を、男は隠しナイフで刺そうとした。

しかし、それよりも早く白銀の線が男の首の動脈をかすっていった。

「…えっ……?」

男はあまりの速さに何が起こったのか分からない様子だった。

「来世では幸せな人生を」

そして、殺した後に呟くこの言葉もいつも言っていた。

その直後、首から血が吹き出た。

「かっ…!」

スッと稀琉が手を離すと、男は血を吹き出しながら床に崩れ落ちた。

ビクビクと体が痙攣しているが、彼はすでに死んでいる。

「ヒッ…!」

「なっ、なんなんだ、テメェ…!」

仲間を殺されたチンピラは焦っている。

そんなチンピラに対し、稀琉は冷静だ。

「……ただの、カフェの従業員ですよ」

そう言うと、稀琉はその2人向かって走り出した。

「ギャ…ギャアアア!」

直後、断末魔が響き渡った。
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