Devil†Story
「ふぅ……」


数十分後。辺りにはチンピラの死体が転がっていた。

本当に……こんな風に人生を棒に振るなんて…気の毒な人達。

まともに生きれば良かったのにね。

…まぁ、今の世の中は真面目に生きてる方が馬鹿を見ることが多いけど。

なんだか、悲しい世の中だな。

返り血が白かった稀琉の上着に付着している。

頬や帽子にも血が付いており、頬の血が頬を伝っていった。

あー…上着にも、帽子にも血が付いちゃったな。

上着は良いとして…帽子は後で手洗いしないと。

「………」

人を殺めた稀琉の顔はとても悲しそうだ。

この人達より…オレが罰を受けるべきなんだよね、本当は。

人を殺めて…その上、あんなことをしてしまったオレが…ね。

その時、後ろから誰かが来た。

「お疲れ様です。キル様」

「怜姫さん」


話し掛けてきたのは怜姫さんだった。

辺りに血や死体があるというのに怜姫は至って普通だった。

耐性があるのかな。

もしかしたら、怜姫さんの雇主の人も裏の人間なのかな?

まぁ、余計な詮索はしないけど。

「周りに居た人達は皆片付けましたので、安心して下さい」

とりあえず、報告だけはしておいた。

「はい。こちらでもご確認致しました。ありがとうございます」

「いいえ。仕事ですから」

やっぱり、怜姫さん…感情が読めないな。

言葉使いも丁寧で、淡々と業務をこなす怜姫さん。

こんなこと、思ってはいけないと思うけど…なんだか綺麗な人形のようだ。

そう感じるところが、同じような目をしたクロムとは違う部分の1つだ。

その点、クロムはある意味分かりやすいからな。

この間もすぐ怒ったしね。
ただ…クロムが笑ってるとこ…戦いでしか見たことがないんだよな。

でも、あれは…笑ってるけど全然違う“笑顔”だもんね。

もっと笑ってくれると良いのに。

ロスや麗弥みたいにね。

クロムも…抱えてる物が大きいんだなっては思うけど…戦いだけが楽しいじゃ…悲しすぎるもん。

ただやっぱり、元は優しい人だったとは思うんだ。

皆は違うって言うかもしれないけど…

クローに対して…いや、動物に対してなんて凄く優しいし、普段と違って穏やかだし。

やっぱり、人間嫌いなのかなぁ……。

なんとかして、クロムの心を少しでも解してあげたいな。

オレなんかにできるかは分からないけど……。

そんな考え事をしている時だった。

「あの…キル様」

「!」

怜姫さんに話し掛けられ、一気に現実に戻された。

「あっ、すみません。考え事してて…」

「左様ですか。あの…今から少しでもお時間ありますでしょうか?」

「あっ、大丈夫です」

「ありがとうございます。実はですね。先程、主から連絡がありまして…今回依頼を担当して下さったキル様に是非お会いしたいということだったのですが…お時間頂けないでしょうか?」

「えっ…」

オレは驚いた。

刹那ならオーナーだから分かる。でも…

確かに、依頼を担当したのはオレだけど…オレは人殺しだ。

そんなオレに会いたいなんて…良いのかな。

「もしかして、ご都合が合いませんか?」

「あっ、いや、そんなことないですけど…。あの…オレなんかが会っても…良いんですか?」

つい堪えきれず、そう聞いてしまった。

しかし、怜姫さんは相変わらず淡々と「はい。ご依頼を担当して下さったキル様に是非ということです」と返した。

まぁ、見てみたいのかもね。どんな人が裏の仕事してるのか。

オレは時計を確認した。今は23時30分。

遅くはなるけど…理由はどうあれ是非なんて言ってくれてるんだから断るのもアレだし、断る理由もないもんね。

オレは「分かりました。オレなんかで良ければ」とだけ答えた。

「ありがとうございます。では、主を呼んで参りますので、少々お待ち下さいませ」

そう言うと怜姫さんは頭を下げ、奥の方に行った。

夜風が吹く庭でオレは待つことになった。

まだ昼間は暑い日々が続く季節だが、夜は段々涼しくなってきた。

秋もすぐ目の前だろう。

それにしても、ちょっと暇だな。

呼びに行くなら…ちょっと時間掛かるかもね。

じゃあ、この間に…刹那に報告しておこう。

俺は新しく貰ったタッチパネル式の携帯を取り出して、刹那に電話した。

プルルル…プルルル…ガチャ


「はいはーい、もしもし?」

2コール程で刹那は出た。

「もしもし?オレだけど」

「あぁ、稀琉。終わったのかい?」

「うん。もう終わった」

「お疲れ様」

刹那は優しくそう言った。

「お疲れ様。それでさ、刹那。今から怜姫さんの雇主の人がオレに会いたいらしいから、ちょっと遅くなるね」

「…雇主の人が?」

刹那は不思議そうに聞いた。

そうだよね。オレもビックリしたくらいだもん。

「うん。是非会いたいんだって。だから、よろ――」

そこまで言った時だった。

「――随分と、楽しそうだね。…キル」

「!!」

聞き覚えのある声にオレは体が硬直した。

この声…まさか……!

「――稀琉?もしもし?」

電話越しから刹那の声がするが、オレはそれに答えられなかった。

だって…この声は…!

オレは恐る恐る振り替える。

そこに居たのは…オレと同じ金髪、青目の…懐かしい人だった。

「にっ――」

そう言った直後、刹那の電話口から轟音が聞こえた。

「稀琉?どうたんだ、稀琉!?稀琉!?」

呼びかけても返事はなかったが、何かが床に叩きつけられる音はした。

「もしもし!?もしも――」

――ブツン!ツーツー……

それを最後に、刹那の電話口には無機質な電話が切れた音が聞こえただけだった。
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