Devil†Story
―クロム・ロス SIDE―
「稀琉?おい、稀琉!」
呼び掛けても反応はない。
完全に気を失っているようだ。
脈を計ってみると、ゆっくりながらあった。
「…どう思う?」
傍らに居たロスに聞いてみた。
「んー…正直、ちょっとヤバいかも」
傷を見ながら、ロスはそう言った。
見るところ、全身に薔薇の棘の切傷、腹と胸には刺し傷があり、大量に出血している。
いくら普通の人間より、傷が治るのが早いと言っても、これは明らかに酷いものだった。
瀕死状態か…だが、死なれると面倒だ。
俺は舌打ちしながら、あたりに落ちていた尖っている石を拾い、手首を切った。
ブシュッと血が吹き出る。
「何してんの?」
ロスは不思議そうに聞いて来た。
「いくらなんでも、これだとくたばりそうだろ。死なれたら面倒だからな。お前の血は治癒能力があるが…それだと“契約”することになっちまうし、下手すると余計くたばっちまうからな。だから、お前の血が入ってる俺の血を入れれば少しは違うと思ったんだよ」
そう。ロスの血には生き物の傷を治す効力があるが、それは悪魔と“契約”を交わさなければいけないということだ。
ロスに契約をする、意思がなければ大概の生き物は、ロスの力に耐えきれず、傷が治っても、すぐに破壊され死に至るか、運良く生き残れたとしても悪魔との契約印が体に記される。
そうなれば、クロムと同じで身体能力や、治癒能力が上がるがその代わりに一定の数や期間、多くの生き物の命を刈り取らなければならなくなる。
きっと稀琉なら耐えられるとは思うが…それは、俺達の存在を知らせなければいけなくなるし、面倒だ。
だから、ロスの血が薄まっているクロムの血ならそれなりに治癒能力もあり、そういった副作用もないのかもしれないと考えたのだ。
「にゃるほどねー。あんま前科がないから、分からないけど……やってみるしかないな。このまま出血してたら、刹那んとこ戻る前にマジでくたばっちまうかもしんねーし」
ロスは納得したように呟いた。
「あぁ。とにかく時間がない。やるぞ」
クロムはそう言うと、血が滴る腕を稀琉の体の上に持っていった。
ピチャンとクロムの血が稀琉の胸の上に落ち、傷口に落ち吸い込まれていく。
――ドクン
「うっ…ッ!」
その瞬間、稀琉が胸を押さえて苦しみ出した。
「ハァ…ッ…!つ…ッ!」
暴れる稀琉の体をロスが抑える。
「……拒絶反応か?」
クロムが静かに問う。
「いや…大丈夫だな。お前は身を持って俺の血を体に入れたから分かると思うが…やっぱ、薄まっていようが俺(悪魔)の血が他の生き物に入れば…それなりに苦しいさね。稀琉がどんなに他の人間と違ってもな。もちろん、麗弥に入れたって同じだろうよ。実際…俺の血を受け入れたお前の血にも多少は魔力が含まれてるから、それに反応しちまってるだけだとは思うけど」
「そうか」
クロムはロスと契約した時のことを思い出す。
「確かに…あん時は結構苦痛だったからな。仕方がないか……」
その言葉通り、稀琉はすぐに落ち着きを取り戻した。
みるみる内に出血も少なくなってきた。
「しかしあいつ何者だ?」
「これ操って稀琉に怪我させたみたいだが…」と、傍らに落ちていた薔薇の蔓を手にした。
「なんだろうな。まぁ、普通の人間じゃないな。気配もこの薔薇も。つーか、この薔薇…こないだ、麗弥の事件が終わった後に落ちてた薔薇と同じだな」
「それで“兄さん”ときたもんだ。…稀琉の言葉が本当だとしたら…こいつの兄貴がこいつを傷付けてるってことだろ?」
「あぁ。まぁ…薔薇を見て吐いたりしてたし何よりこの傷…全く抵抗してないね。過去になんかあったんだろ」
「この傷を見る限り普通じゃないな。奴が去り際に放った言葉もそうだが…よっぽどの“恨み”を持ってるな、その兄貴が」
「稀琉が恨まれるようなこと…するとは思えないけどねぇ」
しみじみと言うロスにクロムは言い返した。
「馬鹿。よく考えてみろ。アイツはなんだかんだで1番目の従業員だろ?俺が7年前、麗弥が8年前…で、麗弥がなる2年前には居たんだから…少なくとも6歳の時には裏の生活をしてんだ。10年以上してるんだから、それなりに麗弥みたいに親を殺されたみたいな、何か理由があるだろ。それに、あの傷の治りが早いとバレた時の稀琉の反応。とても“普通”の生活を長くしたことがあるとは思えんがね」
「確かになー。まぁ、ここで議論してたって何にも分からんさ」
「流石にこのまま放置してたら稀琉もヤバいし」と、ロスは背伸びしながら言った。
「そうだな。稀琉を運べよ。お前が稀琉おぶって空を行けばすぐ着くだろ。俺は下から追いかける。俺だけならお前に合わせて行けるしな」
「そーだな。その方が良いかもな。どれ」
ロスはそう言うと、血塗れの稀琉をおぶり、羽を広げた。
大きな翼が夜の空に広がる。
そして、2人が行こうとした時、洋館の姿がぐにゃりと歪んだ。
「!」
次の瞬間、豪華な洋館が廃墟に変わった。
「にゃるほど。魔術とは違う系統だけど何かの術をかけて綺麗に見せてたんだな」
「そのようだな。……もしかしたら、仕組まれたかもな」
「あぁ。その可能性は高い」
「まぁ、良い。それは刹那も交えないとなんとも言えないからな。とにかく行くぞ」
「あいよ」
クロムの言葉にロスは翼を広げて、夜の空に舞い上がった。
クロムは、近くの塀に飛び、その廃墟の屋根に飛び移った。
ロスは空を、クロムは屋根を伝ってカフェに戻っていった。
「稀琉?おい、稀琉!」
呼び掛けても反応はない。
完全に気を失っているようだ。
脈を計ってみると、ゆっくりながらあった。
「…どう思う?」
傍らに居たロスに聞いてみた。
「んー…正直、ちょっとヤバいかも」
傷を見ながら、ロスはそう言った。
見るところ、全身に薔薇の棘の切傷、腹と胸には刺し傷があり、大量に出血している。
いくら普通の人間より、傷が治るのが早いと言っても、これは明らかに酷いものだった。
瀕死状態か…だが、死なれると面倒だ。
俺は舌打ちしながら、あたりに落ちていた尖っている石を拾い、手首を切った。
ブシュッと血が吹き出る。
「何してんの?」
ロスは不思議そうに聞いて来た。
「いくらなんでも、これだとくたばりそうだろ。死なれたら面倒だからな。お前の血は治癒能力があるが…それだと“契約”することになっちまうし、下手すると余計くたばっちまうからな。だから、お前の血が入ってる俺の血を入れれば少しは違うと思ったんだよ」
そう。ロスの血には生き物の傷を治す効力があるが、それは悪魔と“契約”を交わさなければいけないということだ。
ロスに契約をする、意思がなければ大概の生き物は、ロスの力に耐えきれず、傷が治っても、すぐに破壊され死に至るか、運良く生き残れたとしても悪魔との契約印が体に記される。
そうなれば、クロムと同じで身体能力や、治癒能力が上がるがその代わりに一定の数や期間、多くの生き物の命を刈り取らなければならなくなる。
きっと稀琉なら耐えられるとは思うが…それは、俺達の存在を知らせなければいけなくなるし、面倒だ。
だから、ロスの血が薄まっているクロムの血ならそれなりに治癒能力もあり、そういった副作用もないのかもしれないと考えたのだ。
「にゃるほどねー。あんま前科がないから、分からないけど……やってみるしかないな。このまま出血してたら、刹那んとこ戻る前にマジでくたばっちまうかもしんねーし」
ロスは納得したように呟いた。
「あぁ。とにかく時間がない。やるぞ」
クロムはそう言うと、血が滴る腕を稀琉の体の上に持っていった。
ピチャンとクロムの血が稀琉の胸の上に落ち、傷口に落ち吸い込まれていく。
――ドクン
「うっ…ッ!」
その瞬間、稀琉が胸を押さえて苦しみ出した。
「ハァ…ッ…!つ…ッ!」
暴れる稀琉の体をロスが抑える。
「……拒絶反応か?」
クロムが静かに問う。
「いや…大丈夫だな。お前は身を持って俺の血を体に入れたから分かると思うが…やっぱ、薄まっていようが俺(悪魔)の血が他の生き物に入れば…それなりに苦しいさね。稀琉がどんなに他の人間と違ってもな。もちろん、麗弥に入れたって同じだろうよ。実際…俺の血を受け入れたお前の血にも多少は魔力が含まれてるから、それに反応しちまってるだけだとは思うけど」
「そうか」
クロムはロスと契約した時のことを思い出す。
「確かに…あん時は結構苦痛だったからな。仕方がないか……」
その言葉通り、稀琉はすぐに落ち着きを取り戻した。
みるみる内に出血も少なくなってきた。
「しかしあいつ何者だ?」
「これ操って稀琉に怪我させたみたいだが…」と、傍らに落ちていた薔薇の蔓を手にした。
「なんだろうな。まぁ、普通の人間じゃないな。気配もこの薔薇も。つーか、この薔薇…こないだ、麗弥の事件が終わった後に落ちてた薔薇と同じだな」
「それで“兄さん”ときたもんだ。…稀琉の言葉が本当だとしたら…こいつの兄貴がこいつを傷付けてるってことだろ?」
「あぁ。まぁ…薔薇を見て吐いたりしてたし何よりこの傷…全く抵抗してないね。過去になんかあったんだろ」
「この傷を見る限り普通じゃないな。奴が去り際に放った言葉もそうだが…よっぽどの“恨み”を持ってるな、その兄貴が」
「稀琉が恨まれるようなこと…するとは思えないけどねぇ」
しみじみと言うロスにクロムは言い返した。
「馬鹿。よく考えてみろ。アイツはなんだかんだで1番目の従業員だろ?俺が7年前、麗弥が8年前…で、麗弥がなる2年前には居たんだから…少なくとも6歳の時には裏の生活をしてんだ。10年以上してるんだから、それなりに麗弥みたいに親を殺されたみたいな、何か理由があるだろ。それに、あの傷の治りが早いとバレた時の稀琉の反応。とても“普通”の生活を長くしたことがあるとは思えんがね」
「確かになー。まぁ、ここで議論してたって何にも分からんさ」
「流石にこのまま放置してたら稀琉もヤバいし」と、ロスは背伸びしながら言った。
「そうだな。稀琉を運べよ。お前が稀琉おぶって空を行けばすぐ着くだろ。俺は下から追いかける。俺だけならお前に合わせて行けるしな」
「そーだな。その方が良いかもな。どれ」
ロスはそう言うと、血塗れの稀琉をおぶり、羽を広げた。
大きな翼が夜の空に広がる。
そして、2人が行こうとした時、洋館の姿がぐにゃりと歪んだ。
「!」
次の瞬間、豪華な洋館が廃墟に変わった。
「にゃるほど。魔術とは違う系統だけど何かの術をかけて綺麗に見せてたんだな」
「そのようだな。……もしかしたら、仕組まれたかもな」
「あぁ。その可能性は高い」
「まぁ、良い。それは刹那も交えないとなんとも言えないからな。とにかく行くぞ」
「あいよ」
クロムの言葉にロスは翼を広げて、夜の空に舞い上がった。
クロムは、近くの塀に飛び、その廃墟の屋根に飛び移った。
ロスは空を、クロムは屋根を伝ってカフェに戻っていった。