Devil†Story
―朝 クロム SIDE―
「ん………」
ふと目が覚めた。そこが自室でないことに気付くまでにそう時間はかからなかった。
ん…俺、何してたんだっけ…?あー…そーいや、稀琉が大怪我して…手術してたんだっけ。俺、寝てたのか……。
その時だった。
「おはよう、クロム」
ロスの声が聞こえた。…かなり近くで。
「あっ…?ロス――」
無意識に声のする方を見れば、目の前にはロスの顔。
「…………」
まだ寝惚けているので、ぼーっとしているとロスはニッコリと笑った。
……ん?
待て…よ…。
なんで、こんなに近いんだ――
そこでやっと理解した。
「ゲッ!?」
さっとロスから離れる。やはりロスに寄りかかって寝ていた様だ。
最悪だ…!
自分の部屋以外で寝ちまったのも不覚なのに…!こいつに寄りかかってただと…!?
「なーんだよ、いきなり。一晩中寄りかかってたくせにー」
「ひっ、一晩中…!?」
あぁ、マジで最悪だ。一晩中こいつに寄り掛かってたなんて……!なんの嫌がらせだよ、これは。
「おっ、起こせよ!」
「いやー、疲れてたみたいだし?ぐっすり寝てたから悪いと思って。何よりお前寝起き悪いから起こしたくねーんだもん」
「いや、起こせ!もう二度とないが、次もし奇跡的にそんなことがあったら絶対に起こせ!気持ち悪ぃ…!」
あぁ、気持ち悪い…!悪魔とはいえ男に寄り添って寝るとか、どんだけ気持ち悪いんだよ…!ありえねぇ…!考えただけで鳥肌が…!
「ッ〜!」
俺は本当に鳥肌の立っている腕を擦る。
「ひでぇな〜。気持ち悪いなんて。つーか、マジ安心したかのようにぐっすりと――」
「気持ちの悪いことを言うな!大体、なんでお前平気なんだよ!?普通、気持ち悪いだろ!?男だぞ!?おかしいんだぞ!?この状況!」
声をあらげる俺に対し、ロス…いや、この変態猫馬鹿野郎は涼しげな顔で「…別にへーき。なんてことない。それにお前男らしくないし。…てか、猫みたいだったし?」と言いやがった。
「ハァ!?猫!?」
「そりゃあ俺だってムキムキマッチョは嫌だけど…お前、面も体付きも女だし?たまに、寝返り代わりは分からないけど顔を肩の方に擦り付けてくるとこが猫っぽ――「もういい!それ以上何もぬかすな、変態!」
なんだよ、この変態!しかもこいつの肩に顔を擦り付けてただと!?想像しただけで凍りつける。
俺は乱暴に顔を擦りながら、ロスに聞く。
「水は!?水道は何処だ!?顔洗う――待て。つーか俺、昨日シャワー浴びてねぇじゃん!最悪だ…!シャワー浴びないで寝るなんて…!嗚呼、汚い…!」
クロムは普段、どんなに疲れていても意識がない時やよっぽどの大怪我じゃなければシャワーを浴びていた。
以前から話題に上がったが、麗弥からは“異常。もしくは重度”の潔癖症と言われるくらいの綺麗好きだ。
シャワーはもちろんだが、人が口にしたものを口に入れるのも駄目で、皿やコップに僅かについた汚れがあれば絶対に口にしない。専用の食器洗浄機がある位だ。
部屋もいつも綺麗で、ロスが部屋で虫でも潰した日には「そこを拭いて消毒しろ、汚らわしい…!」と、言う程である。
また休日には部屋の掃除をするなどよく見られる光景だった。
その際もロス曰く“埃も何も溜まってないくらい綺麗”な状況でも必ず手袋をし、終わった後は必ずシャワーに浴びる程の徹底ぶりだった。
「おっ、落ち着けよ、クロム」
あまりのクロムの慌てぶりにロスはクロムを宥める。
一応、水道はあるのだが…アレは刹那が手術する時に使ってる医療用の水道。
まぁ、クロムは元が綺麗だから大丈夫だとは思うけど…あの医療器具の手入れを見てたら…なんか申し訳ないってゆーか、我慢しろってゆーか…。
そう思うロスだがクロムは声をあらげて答える。
「これが落ち着いていられるか!?昨日は風が強かっただろ!?だったら、服も髪も砂まみれに決まってる!」
「血とか平気じゃんかよ。あれも、一応体液だぜ?」
普段の仕事の時はどうしても全身に血がつく。その時は全く平気そうだ。…ていうか、砂とかもつくのは気にしないくせに…とロスは密かに思った。
「それとこれとは話が別だ!汚ねぇ…」
「だっ、大丈夫だって。砂くらい。神経質過ぎなんだよ。てか、そんなこと気にしてるから女だって言われるんだぞ?」
「そんなの認めないがこの際、今はどうでも良い…!不潔過ぎて鳥肌が」
これで「ふざけんな。…お前に寄り掛かってて気が滅入ってたんだよ」と言って落ち着くだろうと思って発した言葉だったが今のクロムには響かずにそう言い返されてしまった。
うわ、これはどうしたものか…と思うがやはり宥める以外の方法が思い付かない。
「ま、マジ落ち着けって!普段のお前のクールさは何処に……」
「そんなことどーでも良い!せめて顔を洗わせろ!今すぐ!」
普段の落ち着きは何処へやら。今まで殆ど見たことがないくらいの取り乱し方だ。どうやら色々重なりすぎて取り乱しているようだ。
普段なら…ここまで取り乱したりはしない。
もう、刹那に怒られるの覚悟で医療用の水道を教えるしかない。
「わ、わかったから、落ち着けって!そんなに興奮してっと過呼吸になるぞ」
「やかましい!早くしろよ!」
本当に過呼吸になってしまいそうなくらいのクロムにロスは「分かったっての!」と言い返し、水道まで案内する。
ゴメン、刹那。いつも綺麗にしてるのは知ってるけど…こいつの潔癖症に勝るものはなかったわ。
俺の力不足だ。今度治せたら治しとく…いや、治るかなぁ…と思いつつ、水道までクロムを案内したロスだった。
そして、顔を洗ったことにより、クロムは驚くくらい落ち着いたのであった。
「は〜…刹那に怒られたらお前、責任取れよー」
「ちっ…分かったよ」
いつもと同じになったクロムが舌打ちしながら答えた。
あー、良かった……。
その時、手術室から刹那が出てきた。
「刹那」
「あれ?なんで、こんなとこに?」
刹那の問いにクロムは勝手に使っていたタオルを置いて答える。
「色々あってな。それより、終わったのか?」
刹那の問いを華麗にスルーし、何事もなかったかの様に聞くクロム。
こんにゃろう…言わない気だな。
いや、大体さ?
一応、仲間である稀琉が死線をさ迷ってたってゆーのに、こいつは…。
KYってゆーか…ね?まぁ、こんな姿…俺にしか見せないけどさ。良いのか悪いのか………。
「あぁ、終わったよ。…一命は取り止めたよ」
刹那の言葉に、ロスは現実に戻った。
「なら良かったな」
「状況は?」
「まぁ、あんまり良くはないよね。それに稀琉…抵抗した素振りが全く見られないんだ」
マスクと帽子を取りながら、刹那はそう言った。その言葉にクロムとロスは顔を見合わせる。
「…そのことなんだが…話がある。その前にシャワー浴びてくるから、稀琉を部屋に運んどけ」
「あれ?シャワー浴びてなかったの?よく大丈――「とっ、とにかくよろしく!」
刹那の言葉に被せるようにロスは言った。
こら刹那ぁ…!また火をつけるようなことを言うんじゃないよ…!
「えっ?分かった」
「そういうことだから後でな」
クロムはそう言うと自室に向かった。
「了解」
「よろしく〜」
ロスはほっと息を吐いて、クロムの後に続いた。
「………まさか…」
クロム達を見送りながら、刹那は嫌な想像をしていた。
そして、石川が運んできた眠っている稀琉の表情を見る。
「オーナー。稀琉さんを部屋に運びますよ。…オーナー?」
石川はなんの反応もしない刹那の顔を見る。
刹那は、熱か何かで顔を歪ませ、汗をベッタリとかいている稀琉の前髪をかきあげる。
「稀琉…もしかして、君は……」
その問いに答えられるのはまだ眠っている稀琉だけだ。
「ん………」
ふと目が覚めた。そこが自室でないことに気付くまでにそう時間はかからなかった。
ん…俺、何してたんだっけ…?あー…そーいや、稀琉が大怪我して…手術してたんだっけ。俺、寝てたのか……。
その時だった。
「おはよう、クロム」
ロスの声が聞こえた。…かなり近くで。
「あっ…?ロス――」
無意識に声のする方を見れば、目の前にはロスの顔。
「…………」
まだ寝惚けているので、ぼーっとしているとロスはニッコリと笑った。
……ん?
待て…よ…。
なんで、こんなに近いんだ――
そこでやっと理解した。
「ゲッ!?」
さっとロスから離れる。やはりロスに寄りかかって寝ていた様だ。
最悪だ…!
自分の部屋以外で寝ちまったのも不覚なのに…!こいつに寄りかかってただと…!?
「なーんだよ、いきなり。一晩中寄りかかってたくせにー」
「ひっ、一晩中…!?」
あぁ、マジで最悪だ。一晩中こいつに寄り掛かってたなんて……!なんの嫌がらせだよ、これは。
「おっ、起こせよ!」
「いやー、疲れてたみたいだし?ぐっすり寝てたから悪いと思って。何よりお前寝起き悪いから起こしたくねーんだもん」
「いや、起こせ!もう二度とないが、次もし奇跡的にそんなことがあったら絶対に起こせ!気持ち悪ぃ…!」
あぁ、気持ち悪い…!悪魔とはいえ男に寄り添って寝るとか、どんだけ気持ち悪いんだよ…!ありえねぇ…!考えただけで鳥肌が…!
「ッ〜!」
俺は本当に鳥肌の立っている腕を擦る。
「ひでぇな〜。気持ち悪いなんて。つーか、マジ安心したかのようにぐっすりと――」
「気持ちの悪いことを言うな!大体、なんでお前平気なんだよ!?普通、気持ち悪いだろ!?男だぞ!?おかしいんだぞ!?この状況!」
声をあらげる俺に対し、ロス…いや、この変態猫馬鹿野郎は涼しげな顔で「…別にへーき。なんてことない。それにお前男らしくないし。…てか、猫みたいだったし?」と言いやがった。
「ハァ!?猫!?」
「そりゃあ俺だってムキムキマッチョは嫌だけど…お前、面も体付きも女だし?たまに、寝返り代わりは分からないけど顔を肩の方に擦り付けてくるとこが猫っぽ――「もういい!それ以上何もぬかすな、変態!」
なんだよ、この変態!しかもこいつの肩に顔を擦り付けてただと!?想像しただけで凍りつける。
俺は乱暴に顔を擦りながら、ロスに聞く。
「水は!?水道は何処だ!?顔洗う――待て。つーか俺、昨日シャワー浴びてねぇじゃん!最悪だ…!シャワー浴びないで寝るなんて…!嗚呼、汚い…!」
クロムは普段、どんなに疲れていても意識がない時やよっぽどの大怪我じゃなければシャワーを浴びていた。
以前から話題に上がったが、麗弥からは“異常。もしくは重度”の潔癖症と言われるくらいの綺麗好きだ。
シャワーはもちろんだが、人が口にしたものを口に入れるのも駄目で、皿やコップに僅かについた汚れがあれば絶対に口にしない。専用の食器洗浄機がある位だ。
部屋もいつも綺麗で、ロスが部屋で虫でも潰した日には「そこを拭いて消毒しろ、汚らわしい…!」と、言う程である。
また休日には部屋の掃除をするなどよく見られる光景だった。
その際もロス曰く“埃も何も溜まってないくらい綺麗”な状況でも必ず手袋をし、終わった後は必ずシャワーに浴びる程の徹底ぶりだった。
「おっ、落ち着けよ、クロム」
あまりのクロムの慌てぶりにロスはクロムを宥める。
一応、水道はあるのだが…アレは刹那が手術する時に使ってる医療用の水道。
まぁ、クロムは元が綺麗だから大丈夫だとは思うけど…あの医療器具の手入れを見てたら…なんか申し訳ないってゆーか、我慢しろってゆーか…。
そう思うロスだがクロムは声をあらげて答える。
「これが落ち着いていられるか!?昨日は風が強かっただろ!?だったら、服も髪も砂まみれに決まってる!」
「血とか平気じゃんかよ。あれも、一応体液だぜ?」
普段の仕事の時はどうしても全身に血がつく。その時は全く平気そうだ。…ていうか、砂とかもつくのは気にしないくせに…とロスは密かに思った。
「それとこれとは話が別だ!汚ねぇ…」
「だっ、大丈夫だって。砂くらい。神経質過ぎなんだよ。てか、そんなこと気にしてるから女だって言われるんだぞ?」
「そんなの認めないがこの際、今はどうでも良い…!不潔過ぎて鳥肌が」
これで「ふざけんな。…お前に寄り掛かってて気が滅入ってたんだよ」と言って落ち着くだろうと思って発した言葉だったが今のクロムには響かずにそう言い返されてしまった。
うわ、これはどうしたものか…と思うがやはり宥める以外の方法が思い付かない。
「ま、マジ落ち着けって!普段のお前のクールさは何処に……」
「そんなことどーでも良い!せめて顔を洗わせろ!今すぐ!」
普段の落ち着きは何処へやら。今まで殆ど見たことがないくらいの取り乱し方だ。どうやら色々重なりすぎて取り乱しているようだ。
普段なら…ここまで取り乱したりはしない。
もう、刹那に怒られるの覚悟で医療用の水道を教えるしかない。
「わ、わかったから、落ち着けって!そんなに興奮してっと過呼吸になるぞ」
「やかましい!早くしろよ!」
本当に過呼吸になってしまいそうなくらいのクロムにロスは「分かったっての!」と言い返し、水道まで案内する。
ゴメン、刹那。いつも綺麗にしてるのは知ってるけど…こいつの潔癖症に勝るものはなかったわ。
俺の力不足だ。今度治せたら治しとく…いや、治るかなぁ…と思いつつ、水道までクロムを案内したロスだった。
そして、顔を洗ったことにより、クロムは驚くくらい落ち着いたのであった。
「は〜…刹那に怒られたらお前、責任取れよー」
「ちっ…分かったよ」
いつもと同じになったクロムが舌打ちしながら答えた。
あー、良かった……。
その時、手術室から刹那が出てきた。
「刹那」
「あれ?なんで、こんなとこに?」
刹那の問いにクロムは勝手に使っていたタオルを置いて答える。
「色々あってな。それより、終わったのか?」
刹那の問いを華麗にスルーし、何事もなかったかの様に聞くクロム。
こんにゃろう…言わない気だな。
いや、大体さ?
一応、仲間である稀琉が死線をさ迷ってたってゆーのに、こいつは…。
KYってゆーか…ね?まぁ、こんな姿…俺にしか見せないけどさ。良いのか悪いのか………。
「あぁ、終わったよ。…一命は取り止めたよ」
刹那の言葉に、ロスは現実に戻った。
「なら良かったな」
「状況は?」
「まぁ、あんまり良くはないよね。それに稀琉…抵抗した素振りが全く見られないんだ」
マスクと帽子を取りながら、刹那はそう言った。その言葉にクロムとロスは顔を見合わせる。
「…そのことなんだが…話がある。その前にシャワー浴びてくるから、稀琉を部屋に運んどけ」
「あれ?シャワー浴びてなかったの?よく大丈――「とっ、とにかくよろしく!」
刹那の言葉に被せるようにロスは言った。
こら刹那ぁ…!また火をつけるようなことを言うんじゃないよ…!
「えっ?分かった」
「そういうことだから後でな」
クロムはそう言うと自室に向かった。
「了解」
「よろしく〜」
ロスはほっと息を吐いて、クロムの後に続いた。
「………まさか…」
クロム達を見送りながら、刹那は嫌な想像をしていた。
そして、石川が運んできた眠っている稀琉の表情を見る。
「オーナー。稀琉さんを部屋に運びますよ。…オーナー?」
石川はなんの反応もしない刹那の顔を見る。
刹那は、熱か何かで顔を歪ませ、汗をベッタリとかいている稀琉の前髪をかきあげる。
「稀琉…もしかして、君は……」
その問いに答えられるのはまだ眠っている稀琉だけだ。