Devil†Story
(なんだろ?)
キルはなんだか、入りづらくそのまま襖に手をかけたまま止まってしまった。
すると、兄と父の声が聞こえてくる。
「またその話か…。これは、散々話し合ったことだろう?決定事項だとな」
「決定事項って…でも、まだ不安定じゃないか」
「今はそうでも…お前と同じ年くらいになれば落ち着いてくるだろう」
(兄さんと…同じ年?)
兄と同じ年になればという言葉に、キルはなんとなく自分のことを話しているのだと悟った。
「それは…そうかもしれない。でも…!」
「でもじゃない。…あの子じゃないと駄目なんだ。…」
父の言葉を聞くため耳を澄ましていたキルに…驚くべき言葉が耳に入った。
「“鬼”の血を引く…あの子じゃないとな」
「!!!」
思わず倒れそうになる。
僕が…鬼の血を引いている…?
呆気にとられているキルの耳に父親の言葉が入り込む。
「お前にはもう何度も話していると思うが…この青鬼院(せいきいん)家は代々…鬼の末裔として鬼を崇めてきた。末裔と言っても…時代と共に鬼が衰退し…今は鬼の一族も人間になってしまっているが、少なからず我々にも鬼の力が宿っている。ほんの僅かだがな。だが…1000年に1度…我々、青鬼院家の中にその力を強く宿した鬼の血を引き、その力をもった赤子が生まれる。…それがキルだ」
スゥっと父親の言葉がキルの中に溶けていく。
僕が…鬼の力を引き継いでいる…?
その時、兄がチラリと一瞬扉の方を見た。
しかし、父親はそれに気付かず話を続ける。
「再生能力、鬼道力(きどうりょく)、治癒能力…我々にはない力をキルは確かに持っている。…あの、癖毛も鬼の角の名残だ」
「!!」
気にしていた癖毛の話が出てキルはもう呆然としていた。
角みたいで嫌だったのに兄さんが…猫の耳みたいだって言ってくれたから…気になんなかったのに…なのに…やっぱり…。
月明かりに照らされて出来た自分の影を見つめる。
影でみるとますます鬼に見えた。
体も癖毛の部分も影だと大きいので尚更だった。
僕は…鬼の子なの…?
それとも…血を引いてるだけ…?
頭がパンクしそうだった。
考えれば考えるほど頭が痛く、胸が苦しくなってきた。
ドックン…ドックン…
まだ幼いキルがその事実を受け止めるにはあまりにも大きな出来事だった。
なんか…息まで苦しくなってきた…。
誰か…助けて…。
そこに、キルが居ることを知らない両親はまた口を開く。
「それに……」
父親が、何かを言いかけた時だった。
「…キル」
「!?」
兄が自分を呼ぶ声が聞こえた。
バッと胸の苦しみがなくなった。
「キル!?」
両親に名前を呼ばれたが体が重くて動けない。
あ、謝らないと…立ち聞き…しちゃったんだから…。
そう思うが体は言うことを聞いてくれない。
そんなキルの様子がふすま越しに見えているのか兄は淡々と言葉を続けた。
「トイレ?それなら…早くいっといで。大丈夫。喧嘩なんかしてないから。…心配かけてすまないね」
「!」
あたかも今来たばかりのかの様にそう言う兄。
それも、盗み聞きしていたことには触れずいつもの“喧嘩”を心配していると両親に思わせるように。
「なんだ…今来たばかりか…」
「キル、大丈夫よ。琉稀とは大切なお話していただけだから」
「そうだ、大丈夫だぞ。お前が心配しなくていいんだ」
案の定、ほっとした両親の優しい言葉にやっと襖が開けられた。
スッ…と開けてみると行灯に照らされた両親と兄が優しく微笑んでいる。
「あ…ごめん…なさい。何も言わないで立ってお話聞いちゃって…」
先程の動揺を隠しながらキルはへらっと笑った。
「良いんだ。それより…お前はまだもう少し寝ていないと駄目だぞ」
「そうね。今日はもう休みなさい」
「う、うん…」
「おやすみ」
「お、おやすみ…」
キルが襖を閉めようとした時に兄は「話が終わったら、部屋に行くから…イイ子で待っててね。おやすみ」と言ってくれた。
キルが琉稀を見つめるといつもの優しい笑顔で兄は頷いた。
それを見るとなんだか安心した。
そして、開いていた残りの襖を閉めて部屋に戻っていった。
「…」
閉まった襖を兄が険しい顔で見ていたとも知らずに…。
暫く歩いているとまた頭が痛くなってきた。
(う…また…!)
壁に手をつけながらキルは必死に部屋に向かって歩いた。
さっき両親は“不安定”と言った。きっと鬼の力が抑えられなくなると倒れるんだ…。
だからよく熱を出してしまうのかな…。
だから…お部屋…から出ちゃ…駄目…なのか…な…?
段々と回らなくなってきた頭を必死に動かしながらキルは自室に向かって歩いた…が、そこまで持つはずもなく…。
「…あっ…!」
ドサッ!と先程キルが寝ていた部屋の前で倒れてしまった。
「ハァ…ハァ…」
息が苦しくて仕方がなかった。
で…も…
ここで…倒れてたら…きっと兄さんも両親も…心配…する…
「うっ…」
キルは動かないカラダをなんとか引き摺りながら襖を開けて半身だけ中に入った。
そこまでで限界だった。
(ア…レ…?)
ぼやける目に入ったのは、鬼の間にある、あの大きな水晶の柱。
よく見えなかったがなんだかぼんやりと光っている気がした。
(オカ…シイな…。この部屋…にも…電気がな…いから…光るわけ…ないのに…)
そう思うキルの意識はもう保てそうになかった。
(あ…もう…だめ…だ…)
キルはそう思うと静かに目を閉じて意識を失った。
--ポゥ
そんなキルの様子に蒼白い蛍火のような水晶の光が増した。
次に目を開けたときにアレだけの悲劇が待ち受けていることなど…キルはまだ知らない。
そして、再び目を覚ましたキルに待ち受けていたのはあまりにも悲しい出来事だった…。
キルはなんだか、入りづらくそのまま襖に手をかけたまま止まってしまった。
すると、兄と父の声が聞こえてくる。
「またその話か…。これは、散々話し合ったことだろう?決定事項だとな」
「決定事項って…でも、まだ不安定じゃないか」
「今はそうでも…お前と同じ年くらいになれば落ち着いてくるだろう」
(兄さんと…同じ年?)
兄と同じ年になればという言葉に、キルはなんとなく自分のことを話しているのだと悟った。
「それは…そうかもしれない。でも…!」
「でもじゃない。…あの子じゃないと駄目なんだ。…」
父の言葉を聞くため耳を澄ましていたキルに…驚くべき言葉が耳に入った。
「“鬼”の血を引く…あの子じゃないとな」
「!!!」
思わず倒れそうになる。
僕が…鬼の血を引いている…?
呆気にとられているキルの耳に父親の言葉が入り込む。
「お前にはもう何度も話していると思うが…この青鬼院(せいきいん)家は代々…鬼の末裔として鬼を崇めてきた。末裔と言っても…時代と共に鬼が衰退し…今は鬼の一族も人間になってしまっているが、少なからず我々にも鬼の力が宿っている。ほんの僅かだがな。だが…1000年に1度…我々、青鬼院家の中にその力を強く宿した鬼の血を引き、その力をもった赤子が生まれる。…それがキルだ」
スゥっと父親の言葉がキルの中に溶けていく。
僕が…鬼の力を引き継いでいる…?
その時、兄がチラリと一瞬扉の方を見た。
しかし、父親はそれに気付かず話を続ける。
「再生能力、鬼道力(きどうりょく)、治癒能力…我々にはない力をキルは確かに持っている。…あの、癖毛も鬼の角の名残だ」
「!!」
気にしていた癖毛の話が出てキルはもう呆然としていた。
角みたいで嫌だったのに兄さんが…猫の耳みたいだって言ってくれたから…気になんなかったのに…なのに…やっぱり…。
月明かりに照らされて出来た自分の影を見つめる。
影でみるとますます鬼に見えた。
体も癖毛の部分も影だと大きいので尚更だった。
僕は…鬼の子なの…?
それとも…血を引いてるだけ…?
頭がパンクしそうだった。
考えれば考えるほど頭が痛く、胸が苦しくなってきた。
ドックン…ドックン…
まだ幼いキルがその事実を受け止めるにはあまりにも大きな出来事だった。
なんか…息まで苦しくなってきた…。
誰か…助けて…。
そこに、キルが居ることを知らない両親はまた口を開く。
「それに……」
父親が、何かを言いかけた時だった。
「…キル」
「!?」
兄が自分を呼ぶ声が聞こえた。
バッと胸の苦しみがなくなった。
「キル!?」
両親に名前を呼ばれたが体が重くて動けない。
あ、謝らないと…立ち聞き…しちゃったんだから…。
そう思うが体は言うことを聞いてくれない。
そんなキルの様子がふすま越しに見えているのか兄は淡々と言葉を続けた。
「トイレ?それなら…早くいっといで。大丈夫。喧嘩なんかしてないから。…心配かけてすまないね」
「!」
あたかも今来たばかりのかの様にそう言う兄。
それも、盗み聞きしていたことには触れずいつもの“喧嘩”を心配していると両親に思わせるように。
「なんだ…今来たばかりか…」
「キル、大丈夫よ。琉稀とは大切なお話していただけだから」
「そうだ、大丈夫だぞ。お前が心配しなくていいんだ」
案の定、ほっとした両親の優しい言葉にやっと襖が開けられた。
スッ…と開けてみると行灯に照らされた両親と兄が優しく微笑んでいる。
「あ…ごめん…なさい。何も言わないで立ってお話聞いちゃって…」
先程の動揺を隠しながらキルはへらっと笑った。
「良いんだ。それより…お前はまだもう少し寝ていないと駄目だぞ」
「そうね。今日はもう休みなさい」
「う、うん…」
「おやすみ」
「お、おやすみ…」
キルが襖を閉めようとした時に兄は「話が終わったら、部屋に行くから…イイ子で待っててね。おやすみ」と言ってくれた。
キルが琉稀を見つめるといつもの優しい笑顔で兄は頷いた。
それを見るとなんだか安心した。
そして、開いていた残りの襖を閉めて部屋に戻っていった。
「…」
閉まった襖を兄が険しい顔で見ていたとも知らずに…。
暫く歩いているとまた頭が痛くなってきた。
(う…また…!)
壁に手をつけながらキルは必死に部屋に向かって歩いた。
さっき両親は“不安定”と言った。きっと鬼の力が抑えられなくなると倒れるんだ…。
だからよく熱を出してしまうのかな…。
だから…お部屋…から出ちゃ…駄目…なのか…な…?
段々と回らなくなってきた頭を必死に動かしながらキルは自室に向かって歩いた…が、そこまで持つはずもなく…。
「…あっ…!」
ドサッ!と先程キルが寝ていた部屋の前で倒れてしまった。
「ハァ…ハァ…」
息が苦しくて仕方がなかった。
で…も…
ここで…倒れてたら…きっと兄さんも両親も…心配…する…
「うっ…」
キルは動かないカラダをなんとか引き摺りながら襖を開けて半身だけ中に入った。
そこまでで限界だった。
(ア…レ…?)
ぼやける目に入ったのは、鬼の間にある、あの大きな水晶の柱。
よく見えなかったがなんだかぼんやりと光っている気がした。
(オカ…シイな…。この部屋…にも…電気がな…いから…光るわけ…ないのに…)
そう思うキルの意識はもう保てそうになかった。
(あ…もう…だめ…だ…)
キルはそう思うと静かに目を閉じて意識を失った。
--ポゥ
そんなキルの様子に蒼白い蛍火のような水晶の光が増した。
次に目を開けたときにアレだけの悲劇が待ち受けていることなど…キルはまだ知らない。
そして、再び目を覚ましたキルに待ち受けていたのはあまりにも悲しい出来事だった…。