Devil†Story
あれから、2週間後…。


それまでは、何事もなく普段通りに過ごした。


稀琉の傷もだいぶ癒えており、少しずつ任務に戻れるようになってきた。


刹那は普段もきちんと調査をしているが、それ以上に慎重に依頼を調査をしてきた。


そのお陰もあったかもしれない。


今のところは稀琉の兄に動きはない。


稀琉は、傷だけではなく心も少しずつ回復させていた。


そして、今日。


麗弥は、任務を終わらせた。


「ふーっ。これで、終いやな」


良い大人の男が悲鳴をあげながら逃げていく後ろ姿を見ながら麗弥は呟いた。


今回の麗弥の任務はストーカー男の尾行、及び罰(殺害はせず、少し怖い目に遇わせるだけ)を与えるものだった。


ほんま、好きな癖になんでわざわざ嫌われるような事するんだか…。


今時、ツンデレだけやなくヤンデレも居るってゆーけど…


俺はストーカーとか大嫌いやから、そんな卑劣な野郎には二度とそんなことできへんように今日は、依頼人の要求よりか10倍は怖くしたけどな。


女性に怖い思いさせるなんて絶対許さへんし。



てか、荒み過ぎやろこの国。


ストレス多すぎや。


まっ、せやからこんな商売がまかり通ってるんやけど。


「何はともあれ…これでえーんだろうから、帰るとしますか」


こうして夜の路地裏を後にしようとした時だった。


「ーーコンバンハ、おにーさん」


「?」


呼び止められて後ろを振り返ると、そこには俺よりも2~3つ年下であろう金髪のぱっつんの男の子と同じく金髪のぱっつんにツインテールをした黒いドレスの様な服を着た女の子が居た。


2人とも服装が似ている系統だった。



今、流行りのヴィジュアル系というものだろう。


そうすると、女の子はゴスロリってやつか。


…うん、お姉さん系も好きやけど、こういう系も可愛えし、好きやな。


おまけに女の子は、猫のぬいぐるみまで持っていた。


…ツギハギだらけでなければもっと可愛いであろうぬいぐるみを。



「こんばんは。どーしたん?こんな夜遅くに。特にお嬢さんはそんな可愛え格好してると変な人に遇うで?」


「ちょっと用事があって」


女の子はニコリと「大丈夫~」と答え、男の子の方が俺の問いに答えた。


二人とも可愛い笑顔である。


「用事?」


「そ~。…おにーさんに」


女の子は先程とは違う笑顔でニタリと笑った。


その瞬間、後ろから気配がした。



「!」


瞬時に右側に体をそらすと、その横を凄いスピードで何かが通りすぎていった。


目で追うと、女の子の隣には無表情の長身の男が立っていた。


つぅと頬から血が垂れた。


その原因は男が持っている小刀だろう。


「へ~…こんな可愛えのにおっかないことするやね」


グイッと頬の血を拭い銃を構えながら答えた。


「うふふ…♪」


「おにーさんこそ、武器出すの早いね。そんな優しそうなのに」


ぱっつん君(仮)が余裕綽々に言った。


「俺かて君らみたいな可愛え子にこないなもん向けたくはあらへんけど…そんな殺気出されたら優しいお兄さんでいられへんよ」


「あっ、よく分かったねー。僕らの殺気♪」


やはり余裕ありげに呑気に話す彼ら。


3対1やからって余裕ぶってんのか…?


「さっきから、余裕ありげやね。こう見えて少しはやるよ?お兄さん」


そう俺が言うとクスクスと笑い出す2人。


「あっ、信じてあらへんな?」


「そんなことないよ~。…でも」


「もう作製は成功したからね…♪」


そういうと、女の子は鞄からただの人形(ヒトガタ)の人形に何かを積めた。


「はっ?何言うて…」


俺がそう言うとおもむろに人形の左足を折り曲げた。


ーーバキッ


「ッ!?」


その瞬間、俺の左足はなんの前触れもなく嫌な音を立てて折り曲がった。


「なっ…!」


左足は完全に折れており、俺は崩れるように地面に倒れた。


「ほらね?言った通りだったでしょ?♪」


女の子は、笑顔でそう言った。


バカな…一体どうやって俺の左足を折ったんや…!?


「くっ…」


痛みに顔を歪めると、女の子は男に対して「ご苦労様♪セル♪」と言った。


何がなんだかさっぱりわからない。


すると、そんな俺の心を知ってか知らずか女の子は嬉しそうに笑う。


「子どもだからって舐めてるからだよ~?この可愛い人形使い(ドールテイマー)ミシェルちゃんを甘く見たから~」


「甘い物はだーいすきだけど♪」と付け足す。


「ドール…テイマー?」


「そっ♪さっきセルに背後から襲わせたのは別に不意打ちを狙ったわけじゃないんだよ~。…アンタの髪の毛をとるためだったの♪」


「!?」


俺は咄嗟に髪の毛に手をやった。


そうか…


頬を傷付けたのは、髪の毛を抜かれる少しの痛みを誤魔化すためか…!



「そっ♪髪の毛さえあれば、この身代わり人形でアンタの体は思い通りに動かせるってわけ♪」


そう人形の左手を手を振るように左右に振った。


すると、そんなことしていない筈の左手が勝手に動いた。


理屈では分かる。しかし…髪の毛を抜かれただけで他人の体を動かせるなんて…藁人形や漫画の世界やあるまいしそんなこと…。


「ーーできないと、思ってるでしょ?」


「!」


背後からあのぱっつん君の声がした。


それと同時に獣臭い匂いが鼻をついた。



「なっ…!!」



俺は我が目を疑った。


だって、後ろに居たのは…大型犬の犬なんかよりもでかい明らかに狼としか言いようがない獣が居たからだ。


「君たち人間の世界ではありえないよね~、そんなこと。でも、僕たちは人間じゃないからさ~♪」


明らかに先程のぱっつん君の声だがその声はその獣の口から発せられていた。


「ごめんね、おにーさん。痛いと思うけど…これも、あの人の命令だから許してね?」


そう言うと、肩にガブリと噛みついた。


「ッ!!」


左肩から骨や肉が軋む音がする。


食いちぎられる…!


そう思ったが、あっさりと左肩から口を離す。


しかし、まだ攻撃は続いた。



ーー今度は折られている左足に。


「アアア…!!」


肩を噛みつかれたときよりも更に大きい痛みが全身に走った。


痛みのせいか、体が痙攣する。


そして、今度は若干ながら足を食いちぎるように横にスライドさせられた。


「グッ…アア…!」


痛みに歯を食い縛っていると女の子は、楽しそうに笑った。


「あ~、可愛い~…♪このままミシェルの操り人形として持って帰りたいけど…それはダメだって言われてるから我慢」


「でも、アンタの人形は手にいれたからいつでも連れていけるから良いって言われたら連れて帰れればいっか♪」と、手に持ってた人形を見せる。


「!」


その人形は先程のただの人形の人形ではなく…人形化されたら恐らくこうなるであろう俺自身の姿になっていた。


「ごめんねー、痛かったよねー?でも、おにーさん、醜鬼みたいだからこの位の傷なら綺麗に治るしいいでしょ?」


と他人事のようにぱっつん君…いや、今は狼の彼はそう言った。


「言うてくれるわ…結構痛いで?」


本当の事だった。


いくら普段傷なれしているとはいえ…足を折られその上肩を噛まれ、おまけにその折れた足を若干とはいえ食いちぎられているのだから。


普通の人間なら、まず左足は使えなくなることだろう。


「ふふ…安心しておにーさん。おにーさんをさっきミシェルが言った通り連れていったりしないから。ただ…仲間の人に伝言を伝えてくれればそれでOK」



「伝言…?」


シュウ…と、元の姿に戻った彼は口角をつり上げながらこう呟いた。


「…いつでも、君たちをおにーさんと同じ目に合わせられる、よ…って」


「!!」


俺が見ると彼はまた元の笑顔でこう言った。


「僕は狼族のソルト。早く琉稀様のところに来ないと…仲間の人1人1人同じ目に合わせちゃうからね。…特に黒髪のおにーさんには絶対伝えてね?」



黒髪の…クロムのことか…?


「君たち…何者なん…?稀琉の兄貴の刺客なん?…それとも、あのヤナとかいうやつと…同じ目的なん?」


俺がそう聞くか否か、付き人のようなセルと呼ばれた男が一瞬で俺の横に来て腹に蹴りをいれた。


「グッ…!」


一瞬で辺りが暗くなる。


「それは、まだSecret…♪」


ミシェルと言う子は唇に人差し指を当てるとそう呟いた。


それが、耳に届いた途端、俺の意識はなくなる。


「フフフ…早く会いたいな~」


「何はともあれ、これで前段階の準備はOKだね、ミシェル」


「そうね。じゃあ、この眼帯君を奴等の根城の前に置いてこないとね。…セル。頼んだわよ」


「…あぁ」


光を全く宿していない目で麗弥を見ると、彼はそう答えた。


「お祭りの前は楽しいね…♪」


ペロリと口についた血をなめるとソルトはそう呟いた。
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